非正規単身女性を容赦なく「コロナ切り」の過酷 不安定な立場で生計立てており貯蓄も乏しい

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43歳のシングルマザーAさんは、8歳の息子を育てながら、人材サービス会社に派遣社員として1年半勤めていた。5月半ば、新型コロナの影響で7月からは契約を更新しないと告げられた。Aさんは派遣社員のため在宅勤務は許可されないと言われた。同じ仕事をしている正社員はテレワークをしている。子どもの学校が休校となり、学童保育も閉鎖されてしまったため、Aさんは仕方なく、自宅待機を選んだ。

「ショックだった。別に休みたくて休んだわけじゃなく、休まざるを得なかった。リモートさえやらせてもらえず、自宅待機しかできない。その選択肢しかなかった。今まで一生懸命働いてきたのは何だったのだろうと。今までやってきたことは意味なかったな、と裏切られた感じがした」と、Aさんは語った。

幸い、Aさんはその後別の仕事を見つけ、7月からはそこで働くことになっている。

2歳の娘を持つ小林さん(34)は、パートで医療関係の事務をしている。子どもは保育園に預けているが、新型コロナで仕事が増えて忙しくなり、残業すると保育園の延長料金がかかるため支出が増えているという。また、病院で仕事をしているため周りの目も気にせざるを得ない。

小林さんは3年間別居している夫との間で離婚が成立していないため、一人親への政府の支援が受けられない。夫から養育費をもらっていないので実質的にはシングルマザーだが、セーフティネットで拾われない立場にある。朝から晩まで仕事と育児に追われ、「毎日が綱渡りの生活で、不安は尽きない」という。今は残業が思うようにできていないため、「今後、それを理由に切られる可能性があると思う」と話した。

非正規のシングル一人暮らし

非正規で働く独身一人暮らしの女性たちも、セーフティネットからこぼれ、貧困に陥りやすい層に当たる。

大阪に住む美雪さん(53)は派遣社員として農業用機械を製造する工場で10年前から働いてきたが、4月中旬に、新型コロナによる影響を理由に5月末で契約を打ち切ると言われた。派遣会社からは別の仕事を紹介され、早く受けた方がいいと言われて工場を辞めたが、応募した会社の募集はキャンセルとなった。数日後、製薬会社で派遣の仕事が見つかったが、収入は以前の半分に減った。その仕事も7月末までの契約だ。

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