密輸コウモリも取引「ペット輸入大国」日本の闇 野生生物が街中に入ると新興感染症招く恐れも
外来生物は、英語で「エイリアンスペシーズ」と呼ばれ、人間により生息地から移動させられた生物を指す。1970年代、日本ではアライグマを主人公にしたアニメが大人気になり、その影響でペットとして飼う人が増えた。自然環境研究センター編著の『日本の外来生物』によると、飼っていたアライグマが逃げ出したり捨てられたりした結果、現在はすべての都道府県で見られるという。2018年には東京の赤坂や秋葉原で目撃されたとの報道もあった。
五箇博士が指摘するのは、アライグマが運ぶマダニが媒介するSFTSという新興感染症ウイルスの危険性だ。このウイルスはマダニの体内に生息し、人間に重症熱性血小板減少症候群という病気をもたらす。厚生労働省によると、2011年に中国で新しい感染症として報告され、2013年には国内で初めて感染が確認され、以降、毎年60~90人の患者が報告されている。
本来、野生生物とともにいるマダニが、野生生物が街中に出没することにより、野生生物から離れ、人間の生活圏に入る。そうしてマダニの体内にいたウイルスが人間にとりつく機会も増えていく。かつてペットとして人気を博したアライグマは、現在、新たな危険をつくり出している、ともいえる。
生息地から遠い日本でペットとして飼う問題
アライグマの問題は、私たちは野生生物が未知の病原体を保有している危険性を認識しなければいけない、ということを示している。では、そうした感染症をもたらす危険がなければ、遠い原産地から連れてこられたペットを飼うのはOKなのだろうか。
今年3月、私が尊敬していた1人の生態学者が病死した。日本のカワウソ研究の第一人者で元東京農業大学教授、ヤマザキ動物看護大学名誉教授の安藤元一さん。69歳だった。
日本のペットブームについて考えるとき、私は安藤さんの悲しそうな顔が忘れられない。2018年秋、安藤さんは「今、日本ではカワウソを飼うのが大変なブームになっているんです」と話し、「日本はニホンカワウソを絶滅させてしまった。その日本で、今度は東南アジアの生息地から連れてこられたコツメカワウソをペットとして飼うのはいかがなものか」と断じた。
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