「イスラエル・イラン」サイバー攻撃応酬の実態 各国の「能力強化、人材選抜方法」の中身とは

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イスラエル政府は、イランへのサイバー攻撃を認めていない。しかし、5月28日、国際サイバーセキュリティ会議「サイバーテックライブ・アジア」に登壇したイスラエル国家サイバー総局のイーガル・ウンナ局長は、「水道は連鎖反応もしくはドミノ効果があるし、港湾などの輸送にも同様の効果がある」と語り、今回のサイバー攻撃による応酬をほのめかした。

この国際会議でウンナ局長は、イスラエルの水道施設などへのサイバー攻撃について初めて詳細に語った。フォックスニュースが攻撃元をイランと報じたことは承知しているとしつつも、攻撃元がイランだったかどうかは明らかにしなかった。ただし、攻撃したのは「犯罪者ではない」と明言し、政府系ハッカー集団による攻撃だったことを匂わせた。

ウンナ局長は、今回のサイバー攻撃は「現代のサイバー戦における転換点」であり、現代史上初の「ITやデータではなく、実際の生活へ損害を及ぼすため」のものだったと分析している。イスラエル国家サイバー総局はサイバー攻撃をリアルタイムで検知していなかったならば、塩素などの化学物質が適切ではない割合で水に混じり、「有害かつ悲惨な」結果を招いたかもしれないという。

終わりなきサイバー攻撃との戦いの厳しさ

同局長は、「新型コロナウイルス危機の最中にこの企みが成功していれば、民間人に甚大な損害が生じ、水不足や、それよりももっと悪いことが起きたかもしれない」と危機感をあらわにした。「サイバーの冬がやって来る。しかも予想以上の速さでやって来る……。次の攻撃に備えなければならない……。今度の攻撃は今まで以上に高度で、生死に関わるようなものになるだろう」。

この言葉は、人気海外ファンタジー・ドラマ・シリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」で使われた警句「冬来たる」をもじったものだ。ドラマでは、これからやって来る長い冬へ備えよという意味で使われていた。同局長が言いたかったのは、終わりなきサイバー攻撃との戦いの厳しさであろう。

ウンナ局長によると、イスラエル国家サイバー総局が防御を担当する組織数は、4年前は30〜40にすぎなかった。ところが、今や、数百もの組織の防御を担っており、しかも今後さらに多くの組織を守らなければならなくなる。つまり、「それぞれの国のサイバー空間にとって何が本当に重要なのか、何を最も守らなければならないのか、何に対して全面的に対策を取らなければならないのかを考え直さなければならない」(ウンナ局長)。

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