40歳料理人をクビにした社長の酷すぎる言い分 都内でも有数の飲食店激戦地で働いていた

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ユウスケさんによると、店の売りの1つ「安くてうまい刺身」は社長の目利きによるところが大きかった。社長は穏やかな人柄で、職人気質にありがちな気難しいところはなかった。クビを言い渡すときも、心から申し訳なく思っているように見えたという。

解雇後も、社長からは「給料半分以下で働かないか」という無責任なメールが届いた。ユウスケさんは「給料半分で生活できるわけないじゃないですか!」と憤る(筆者撮影)

20年近く世話になったという遠慮も働き、ユウスケさんはその場では何も言い返せなかった。しかし、どうしても納得ができず、翌日、電話で「解雇理由を書面にして送ってほしい」と頼んだ。

すると、数日後、何事もなかったかのように社長から「ランチをやろうと思うんだけど朝から来れる? それでも給料は半分以下しか出せないけど」というショートメールが送られてきたという。

ユウスケさんはこのショートメールの軽薄さにいちばん腹が立ったという。「クビにしておいてなんなんだ、冗談じゃねえよと思いました。『書面がほしい』と言われ、電車通勤だからというのがまともな理由になってないことに気がついたんでしょ」。

社会保険にいっさい加入させていなかった

解雇理由をめぐるいい加減さもさることながら、社長は従業員を雇用保険や健康保険、厚生年金などの社会保険にいっさい加入させていなかった。そして私が驚いたのは、18年間正社員として働きながら、ユウスケさん自身はもちろんほかの従業員たちからもこうした無保険状態に対し、不満や疑問の声が上がったことが一度としてなかったということだ。

ユウスケさんは自分を正社員だというが、雇用契約書を交わしていたわけではない。源泉徴収はされていたというから、雇用関係にはあったのだろう。毎月の給与は約30万円だったが、健康保険や都民税などは自分で払っていたので手取りは25万円ほど。9万円の家賃を支払うと、家計に余裕はなく、国民年金はほとんど払えていないという。

いくら関心がなかったとはいえ、いわゆるブラック企業や“名ばかり正社員”の問題は以前に比べると可視化される機会は増えた。私がそう指摘すると、ユウスケさんは「たしかにそうなんですけど……。でも、本当に居心地のいい職場で。どこかで自分とは関係ない話だと思っていました」と言う。

結局、ユウスケさんは個人加入できる飲食店ユニオン(東京)に相談。ここで初めて無保険状態が違法であることに加え、毎月30時間ほどの残業代が未払いだったことや、雇用保険は2年間さかのぼって加入することができることなどを知った。現在は同ユニオンを通し、未払い残業代や退職金の支払いを求めて話し合いをしているという。

今思うと、社長は店舗のほかに自社ビルも所有。車は最新のクラウンに乗っていたという。「(高級車に乗っていたのは)節税のためもあったかもしれませんが、従業員を数カ月食わせていくだけのお金は持っていたはず。売り上げが落ちてきたとき、よく『困った』『もうダメだ』と言っていたけど、いきなり解雇された僕らほどには困っていなかったと思います」とユウスケさんは言う。

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