村上憲郎・グーグル名誉会長--テクノロジー面での感性がすばらしい《私のアラサー論》
30歳前後の世代は、いい意味でも悪い意味でも、ハングリー精神に欠けている。悪い意味では、今の日本の生活水準、国際的なポジションが自動的に手に入ったというふうに思いがちだ。全体的に、「そこそこ楽しい社会じゃありませんか」という甘さの部分は残っている。
いい意味ではある種肩の力が抜けている。今はあっけらかんとしているのが必要な時代のような気もする。野球漫画で言うと、われわれの世代は『巨人の星』。それに対して、1980年代以降は『タッチ』。最初に見たとき、主人公の両親の“のほほんさ”はいいなと思った。
ただ、海外の若者は日本と全然違う。たとえばアメリカでは階層が上であればあるほど、自分たちがこの社会を担うんだという、誇りや義務感を持って勉学に励んでいる。日本では勉強が人格陶冶(とうや)よりも、安直なハウツー本で周りを出し抜くようなものになっている。どうやってノーブレスオブリージュを作りだすかは日本の大きな課題だ。
また、中国の若者は英語がペラペラ。グーグルの社員の平均年齢は30歳前後だと思うが、日本では技術力は高いのに英語に難があり採用を見送る残念な例もある。
若い世代の英語力はわれわれの世代より落ちているように感じる。昔は大学に行こうと思ったら、豆単をすべて記憶したが、今の人は覚える単語数も絞られている。英語なんて自転車に乗るようなもので、知力と何の関係もない。それなのに英語で大きな不利益を被っている。
30歳前後であればまだ取り返しがつくので、世界で仕事をするなら1万語の語彙を習得すべき。今から3年間、1日3時間英語を勉強したらいい。それでもモノにならなければ英語はあきらめたほうがいい。