このように言うと、さまざまな反論が出るだろうが、私はコロナ禍で今、変わったように見えるところも、5年後には元に戻っていると思っている。
実は「3密」空間でも、すでに満員電車は何の規制もなく、マスクと換気だけで普通に毎朝動いて支障が出ていないし、飛行機のエコノミークラスも、ソーシャルディスタンスなど無視で、隣の人と肘がぶつかる距離のまま座らされ、何時間も飛ぶことが許されている。
筆者も最近、実際に両隣から挟まれた状態で2時間超も乗ったが、とくに機内でクラスターが発生したとの報告もない。
人間の根源的なニーズは減ることはない
商店街にあるカウンターだけの飲み屋を外からのぞけば、すでに以前のとおりにすし詰め状態に戻っている。換気でドアが開放された結果、外から見やすくなったのが唯一の違いだ。1席空けたら経営が成り立たないので、なし崩し的に「隣席との距離については従来どおりでも可」で運用されていくのは確実である。要は、換気と従業員のマスク以外は、何も変わらない。
ただし、クラスター発生実績のある、リスクが高い一部の業態では、「質」の転換が進むはずだ。業態のマイナーチェンジが求められる。客にとってエッセンシャルなものに数が絞られる分、それに対応して提供者側が単価を上げるだろう。
コンサートは収容数を減らさざるをえないため、1席当たりの単価は当然上がる。「行けたら行く」程度の不特定大人数の飲み会はリスキーなので、出席回数が厳選されるようになる。共有のトレーニングジムは人数制限がかかる分、やはり高級化が進む。いわゆる接待を伴う「夜の街」業種は復活が難しいが、雇用全体からみたインパクトは軽微で、通常の生活者の日常には関係がない。
こうして市場原理で一部の特殊な業界では少数精鋭化が進むが、人間の根源的なニーズ自体が減るわけではない。海外旅行に行けなくなれば、国内に行く。外食の回数が減れば、1回当たりの支出は増やせる。顧客側が総支出額を減らしたいわけではない。そこに気づいて、提供者側が付加価値を付けられれば、元に戻るまでに5年もかからないかもしれない。
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