「携帯電話し放題」の英地下鉄、ツバ飛散対策は? 車内でマスク着用のほか自転車通勤も奨励

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5月10日にジョンソン英首相が演説で外出制限を条件付きで緩和すると述べ、通勤者が増えるという予測が立つ中、ロンドン交通局はついに利用客に対し「マスク着用」を促す動きに出た。

コロナ禍以前には、日本人を含むアジア系の人々がマスクを着けて街を歩くと、「重病人が歩いている」と思われ、地元の人々に露骨に避けられるといったことが生じていた。欧州ではほとんどマスク着用の習慣がなく、マスクが売られているところを見ることも少なかった。

日本以上にマスク入手が難しいイギリスで「着用を奨励」とは異常ともいえる要請だったが、英政府は各家庭に送付はせず、政府のWebサイトで「自作」を促す説明書を公表した。これに従ってDIYに励んだ人も多かったが、そもそもマスクについて「どんなものか知らない」「どう使っていいかわからない」という人も多い。着用を奨励されても困る――という状況だったが、今や街に出ている半分以上の人々はマスク着用になった。

一方、フランスでは各自治体が各家庭に送付を進めている。しかし、自治体ごとに調達、送付しているため、各家庭に届く時期はもとより、居住する街によってマスクのデザインが大きく違う。パリでは市役所から手紙付きのセンスのいいものが届いたが、リヨンでは「これは台拭きか雑巾か?」というようなシロモノが送られてきたという。

ともあれ、感染が下火になりつつあるタイミングでの「マスク着用奨励」の呼びかけにはなったものの、公衆衛生に気をつけるきっかけにはなったはずだ。

交通機関での感染に警戒感

筆者は3月27日、「『満員電車は死ぬぞ』コロナでロンドン市長訴え」という記事を発表した。これは、ロンドンのサディク・カーン市長が「家にとどまれ」と訴えたのを紹介したものだ。

ソーシャルディスタンスを保った地下鉄ピカデリー線の車内。20人ほどで「もういっぱい」に感じる。ほとんどの乗客がマスクを着用している(筆者撮影)

結論からいえば、現場に出る労働者が多く住んでいるロンドン東部では、電車内や駅周辺のような人々が多く集まる場所でウイルス拡散が起きた疑いは高い。人口比での死者数の割合も市内の他のエリアと比べて多く、ロンドン全体平均の3倍近くに達した行政区もある。

「マスクなし、車内でおしゃべりお構いなし」という環境が、死者数の差として現れたのかどうかは明確ではないが、感染者数の増加につながる要素の一つになったと考える人は多い。そんな背景もあり、市民らは交通機関の乗客を介したウイルスの伝播を依然として警戒している。

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