日本企業は業績最悪期を脱し格付け安定化は進むが、力強い回復には遠い《スタンダード&プアーズの業界展望》
過去にさかのぼると、平成バブル崩壊の後遺症が残り、ITバブル崩壊にも直撃された02年までは格下げが格上げを大きく上回る時期が続いたが、それでも格上げが一定数あったことを考えると、格上げが皆無だった09年の日本の一般事業会社セクターの状況は極めて異例で、この1年余りの日本企業の信用力への圧力の大きさがうかがえる。
09年12月末時点でスタンダード&プアーズが日本の一般事業会社に付与する格付けを見ると、長期会社格付けが中期的(通常6カ月間から2年間)にどの方向に動きそうかを示す「アウトルック」と、見直しを必要とする特別な出来事や短期的なトレンドに焦点を当て、格付けの方向性を示す「クレジットウォッチ」で、格上げ方向の「ポジティブ」となっている企業はない。
逆に、アウトルックとクレジットウォッチが格下げ方向の「ネガティブ」となっている企業は、格付け対象社数全体の41%に達している。日本企業の業績が好調だった07年末時点では、アウトルックとクレジットウォッチが「ネガティブ」となっていた比率は8%にすぎなかった。
2010年は、日本企業の業績が前年と比べてある程度の落ち着きを取り戻すとみられることから、格付け動向は安定化が進むとスタンダード&プアーズは考えており、格付けの「アウトルック」が上方に修正されるケースも徐々に出てくるだろう。
ただし、格下げはピークを過ぎたものの、それでもしばらくは格付けの下方遷移圧力が残りそうだ。格上げに至るケースは少数にとどまり、固有の信用力事情の改善を反映した場合が中心になるだろうとみている。
業績の最悪期は脱したが、日本企業の課題は山積
日本企業のこの1年ほどの動きを振り返ると、製造業を中心に世界的な景気悪化の直撃を受け、09年3月期は下半期の売り上げ急減と急激な円高が利益を大きく圧迫した。それだけでなく、在庫が急速に積み上がり、売掛金・買掛金のバランスも崩れ、キャッシュフローは大きく悪化した。巨額の特別損失で、株主資本が毀損し、資本・負債構成が大きく悪化する企業も少なくなかった。