米ファーウェイ禁輸、どんな影響をもたらすか アメリカの対中規制強化方針は変わらない

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ファーウェイのサプライチェーンのなかで、アメリカの禁輸措置の影響を真っ先に受けたのは半導体産業だ。それはアメリカ商務省が文書で半導体産業を名指ししたからにほかならない。なかでも一番に影響を受けるのが、世界第1位の半導体製造ファウンドリー部門を有する台湾TSMCである。

ハイテク市場の調査会社TrendForceによると、TSMCはアメリカの許可が取れなかった場合、その期間が短期間であってもスマートフォンなどに使用されるナノサイズ部品の製造稼働率に影響が及ぶとみているという。TSMCはファーウェイ傘下のハイシリコンから受託され、部品を製造していたが、禁輸措置で新規の受注は事実上不可能となる。AMDやNVIDIAなどアメリカ企業からの需要が高まっているとは言え、ハイシリコンとの取引中止で生じる損失は簡単には埋められないだろうと懸念されている。

アメリカに名指しされなかった半導体以外の産業も無傷で済まない。ファーウェイが保有する半導体ウエハの在庫が尽きてしまえば、製品を製造できず、他の部品の取引量減少も避けられない。禁輸措置の影響は間接的にすべてのサプライチェーンに広がっていく。

パワーアンプ産業への影響が大

だが、その影響の程度はメーカーのファーウェイ依存度や扱っている部品によって異なる。一般的に、台湾におけるファーウェイのサプライチェーンは多くの場合、ファーウェイとの取引を売上高全体の5〜15%ほどにとどめている。だが、ファーウェイからの売り上げが全体の20%を超えている企業もある。パワーアンプを生産するWIN Semiconductorsもその1つで、同社はハイシリコンの主なパワーアンプ生産の受託先であり、ファーウェイ関連の売上高は全体の20〜25%に達する。

そのため、台湾の投資顧問会社・統一投顧は、パワーアンプ産業の中でもWIN Semiconductorsの状況が厳しいと指摘する。アメリカの禁輸措置がさらに厳しくなり、ファーウェイと台湾企業の間の取引が不可能になれば、ファーウェイはパワーアンプ製造の受託先を中国国内の企業に切り替えるだろう。有力候補の名はすでに挙がっている。例えば中国のLED最大手・三安ICは近年、パワーアンプ市場に積極的に進出している。

一方で、影響が比較的小さいのがプリント基板メーカーだ。統一投顧によると、アメリカによる禁輸措置の猶予期間中にファーウェイがプリント基板部品を大量購入すると見られており、5~8月の業績が悪化する可能性はひとまず低いという。中長期的に見ても、各社でスマホの新機種開発が行われ、需要の拡大が予測されることから、今回のファーウェイ禁輸措置から受ける影響はそれほど大きくないと考えられそうだ。

禁輸措置が追い風となるメーカーもある。それは台湾のIC設計大手であるメディアテックだ。統一投顧によると、ファーウェイは禁輸措置によるウエハ不足で製造停止リスクを抱えているが、それは他企業にスマホのミドルエンド市場を奪われる可能性があることを意味する。ミドルエンド市場からファーウェイが消えれば、5G向け半導体のウエハ市場に積極的に進出しているメディアテックにとって取引先が増え、有利な状況になる。それはセンサー事業に注力している半導体メーカー・台湾シトロニクスも同様だという。

アメリカ商務省が発表したファーウェイに対する2つの規制は、ファーウェイの5G戦略やスマートフォンの出荷台数に影響する可能性があるだけでなく、そのサプライチェーンの勢力図にも変化を与えつつある。米中のファーウェイをめぐる攻防戦は、今後も市場の関心事であり続けるのは確実だ。(台湾『今周刊』5月25日号)

台湾『今周刊』
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