米ファーウェイ禁輸、どんな影響をもたらすか アメリカの対中規制強化方針は変わらない

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アメリカがファーウェイに対する規制を強化する措置を出したのは、ファーウェイが5Gの国際標準仕様策定において大きな影響力を持っていたためだ。

アメリカ国防総省と政府系シンクタンクは、早くから中国の5G競争力がアメリカに及ぼす影響について議論していた。アメリカがファーウェイを完全に排除しても、各国が5Gネットワークにファーウェイ製品を採用した場合、全世界が中国の影響下に入る、と考えているのだ。

5Gにかかわる中国企業は中国政府と緊密につながっており、その製品を使うことは国家安全保障上のリスクにつながる。これは与党・共和党だけの考えではなく、邱氏は「アメリカが国の利益を守ることを考えた場合の共通認識だ。2020年11月の大統領選でトランプ大統領が再選しなくても、アメリカはファーウェイへの禁輸措置を取り続けるだろう。アメリカのファーウェイへの規制方針は、短期間で変わるようなものではない」と説明する。

中国の5Gインフラ整備計画に影響

ファーウェイへの規制強化で痛手を被ったのは、中国の5Gインフラ整備計画だ。台湾の投資顧問会社である永豊投顧は、「アメリカのいう『ファーウェイへの供給が認められる』120日は9月12日にその期限を迎えるが、(2020年に計画されていた)中国三大通信事業者による基地局設置計画は2020年9月までに完成する予定だ。基地局の設置に関して、アメリカのファーウェイ規制強化による影響は、2020年内は限定的だろう。しかし、2021年以降、中国の5G基地局関連での輸出は大きな打撃を受ける」とみている。

次に大きな影響を受けるのがスマートフォン市場だ。2019年の禁輸措置でファーウェイはGoogleモバイルサービスを利用できなくなり、ファーウェイ製スマホの一部の機種でGoogleアプリケーションが利用できなくなった。これにより、世界のスマートフォン市場に明らかな変化が生じた。

ファーウェイにとって中国以外のメイン市場はヨーロッパだ。前出の邱氏は、欧州におけるスマートフォンのシェアはハイエンド市場をアップルとサムスンの両雄が争い、ローエンド市場をシャオミが占め、ファーウェイは残るミドルエンド市場をターゲットとしていると説明する。しかし、禁輸措置以降、ファーウェイのシェアは減少しているという。

アメリカによるファーウェイ禁輸措置は、5Gの基地局設置をめぐる情勢とスマホ市場に変化を与えた。そして、影響はファーウェイ本体だけではなく、サプライチェーン全体にも広がっている。

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