「ACジャパンのCM」コロナ禍でも重宝される拠所 大喪の礼、震災以来となるテレビCMの緊急事態
本来であればこの時期、心が折れそうな人々を応援するCMがあってもいいはずだが、CMはそこまでドラマティックになれなかった。代わりに機能したのはユーチューブやインスタグラムなどのネットである。
星野源の『うちで踊ろう』は次々とリレーされ、杏は子どもの隣でギター片手に癒し系の美声を披露。『上を向いて歩こう』の演歌系コラボは大物歌手総出演。リモートでアップしているが、ネットにプロが参入したことで動画のレベルは確実に上がってきた。東日本大震災時には、サントリーが『上を向いて歩こう』の歌のリレーで被災地支援したCMが話題になったが、同じアイデアを今はネットが簡単に実現する。
ACジャパンのCMは緊急事態の調節弁なのか?
新型コロナ禍ほどの社会問題が起これば、CMの空き枠は膨大になり、ACジャパンのCMが急増する。ネット上では、これを「ACジャパン祭り」と呼ぶそうだ。ACジャパンは例年10タイプ以上の素材を放送局に預けており、どれをチョイスしてオンエアするかは局に任せられている。
今回のオンエアで多かったのは「にゃんぱく宣言(日本動物愛護協会)」「きみと一緒だから。(日本盲導犬協会)」「子どもたちの惑星(セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)」など数本だが、ささくれ立った世の中をなるべく刺激しない作品が選ばれている。オンエア量は前年の7倍を超している。
3・11東日本大震災の際、CMオンエア再開で1日あたり4000回という膨大な量が流れた。クレーム対応でACジャパンの事務局が崩壊しそうだという話を聞いて、1日お手伝いしたことがある。鳴り続ける電話。人によっては1時間~2時間もクレームに対応しなければならず、事務局は疲弊していた。
ほとんどの内容は「CMがうるさい」「うざい」「今流すべきか?」といったもので、CM自体へのクレームというより、自分の不安やストレスをどこかにぶつけたい、というものであった。このシーズンの最後まで残ったCMは4作品だけ。たまたま筆者が担当していた「あいさつの魔法。」という作品が生き残り、避難場所の子どもたちが「ぽぽぽぽ~ん」と歌っているのを見て、ほっと胸をなでおろした覚えがある。
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