「ACジャパンのCM」コロナ禍でも重宝される拠所 大喪の礼、震災以来となるテレビCMの緊急事態

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新型コロナの火の粉が飛び始めた頃、経済界が頭を痛めていたのは東京オリンピック・パラリンピックの開催の行方だった。ここ数年、日本の多くの企業は56年ぶりのビッグイベント「東京2020」のために邁進していた。開催年の新年を迎え、最終コーナーを回って、後は7月の開催まで一直線の疾走に入るまさにその時期に、見えない恐怖はやってきた。

できれば延期も中止もせず、予定通り開催してほしいというのが政府、東京都、協賛企業および関係する経済界の総意であったと思う。しかし状況はどんどん悪化する。感染が広がり、2月13日には日本で初めての死者が出た。27日には安倍首相が小中高などの一斉休校を発令するに至って、五輪延期の声が大きくなってくる。

ACジャパンのCMが急増してきたのは、この27日以降だ。いくつかの広告主がCMを中止したのだ。2月といえば、春のキャンペーンの始動時期である。自動車の新車種、春の旅行や娯楽、卒業や入学に関係する教育関連、新年度の移動や引っ越し、そしてビール飲料の新製品など、例年であればオンエアされるはずのCMが軒並み姿を消した。

東京ディズニーリゾートは2月29日から休園を決め、それに伴いCMを休止した。ユニバーサルスタジオジャパンも同じく休園。アトラクション「ザ・フライング・ダイナソー」のCMは、当初「臨時休業しております」のスーパーを入れてオンエアを続けていたが、その後休止。JR東日本は「新幹線eチケット」のキャンペーンCMを流していたが、不要不急の外出を避けるという感染予防方針の前に違和感が残った。

かたや、休止できなかったCMもある。ENEOS「日本応援キャンペーン」は、募集締め切りが3月25日までの「東京2020」チケットキャンペーンだったため、不幸にもオンエアを続けることになった。

 「不要不急」と「3密」、コミュニケーション力の差

新型コロナに関するコミュニケーションワードで、最初の間違いは「不要不急の外出を避ける」という要請だろう。「不要不急」はわかりにくい。何が要で、何が不要か? 何が急で、何が急ではないのか? 個人によって判断が分かれるこの微妙な漢語を多用したことで、コロナ対応はややこしくなった。誰でも「自分にとっては、これは不要ではない」と思いたい。だから外出する。感染は拡大する。知らないうちに、見えざる敵は症状もなく忍び込む。

3月4日に国内の感染者は1000人(クルーズ船含む)を超え、11日にはWHOがパンデミックを宣言。その最中に、聖火が日本にやってくる。14日に安倍首相は「聖火リレーに立ち会いたい」と語ったが、結局21日に聖火リレーは延期を決定。24日にはIOCが「東京2020」の1年後への延期を発表する。

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