大成建設、好業績でも「社長引責辞任」のなぜ トップ交代の裏で忍び寄る事業環境の悪化
葉山氏の退任時に社長だったのが、現会長の山内隆司氏だ。そして村田氏の辞任に立ち会ったのも山内氏だ。山内氏が両氏の辞任に何を感じているのか、どうふるまったのかはよくわからない。
とはいえ、2014年~2016年当時の報道によると、山内氏は社長時代から「営業利益と株主還元額で業界トップ」という方針を掲げるなど、誰よりも利益にこだわってきた。2015年に社長交代を決めた理由も、2015年3月期を最終年度とする中計を達成する見通しになったからだという。
実際、上場するゼネコン大手4社(大林組、鹿島、清水建設、大成建設)の過去10年の営業利益を比べると、鹿島と大林組に抜かれた時期もあるが、大成建設はトップを独占している。近年は株主還元も手厚く、時価総額も8397億円(5月29日時点)と、6000億~7000億円台の他社を引き離す。
注目される村田社長の去就
次の注目点は新しく策定される2022年3月期以降の中計と村田氏の今後だ。
山内氏、村田氏と同じく、新社長となる相川氏も東京大学工学部建築学科を卒業後、建築部門で営業を担当してきた。会見で次期中計の方針を聞かれた相川氏は「あくまでも建設事業を核として成長事業基盤を構築するのがベース」として従来どおりの経営方針を繰り返した。
経営方針が変わらないとはいえ、「中計未達で社長交代の前例を作った。自分のクビがかかっている以上、今後は保守的な計画にならざるをえないのではないか」(前出の準大手幹部)との声もあがる。
もう1つの注目が村田氏の今後だ。理由は会長の山内氏との関係性にある。山内氏は1946年生まれで73歳、2007年の社長就任を経て、2015年からは会長を務めている。現在は社外活動を中心にしており、2017年から日本建設業連合会の会長を務めるほか、同年からは建設業界として初の経団連の副会長を務める。いずれも任期は2期4年とされる。
【2020年6月2日12時49分追記】初出時の記事で、一部事実誤認がありました。コメントなどを削除の上、一部表現を修正いたします。
仮に村田氏が早々に代表権を返上するのであれば、文字どり引責のまま退任となる。社長のクビをすげ替えてどこに向かうのか。誰よりも利益にこだわる会社で、新社長となった相川氏の手腕が問われることになる。
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