大成建設、好業績でも「社長引責辞任」のなぜ トップ交代の裏で忍び寄る事業環境の悪化
各社の手持ちの大型工事は東京五輪の競技施設やホテルの工事にメドがつき、2027年開業予定のリニア新幹線の入札もおおむね「8割が発注済み」(準大手ゼネコンの経営企画担当者)という状況だ。
ゼネコンは一般的に、売り上げと利益を工事の進捗や費用の発生にあわせた工事進行基準で計上する。最初の地盤改良や基礎工事は時間がかかるが、費用の発生も相対的に少ないために、売り上げも利益も上がらない。
一方で、鉄骨を組み、内装工事が始まると費用も発生するため売り上げや利益の額が大きくなる。そして最後に設計変更などに伴う追加工事や原価低減活動などで工事の採算を見直す。現在、2023年~2025年に竣工する都市部の大規模な再開発案件はいずれも工事の初期段階にあり、売上高と利益も上がらない端境期の状態だ。
特に、大手ゼネコンはプライドもあって絶好調だった業績を落とすわけにはいかない。2019年ごろから「大手は請負金額30億円ぐらいの中小型工事に降りてきている」(準大手ゼネコン幹部)と、2020年~2022年ごろを意識した受注活動を進めた。その結果、準大手の安藤ハザマや中堅の東急建設などが建築部門の受注を大幅に落とすようになった。
近年で2度目の引責辞任
大型案件も、森ビルが手掛ける虎ノ門・麻布台の再開発計画を筆頭に、厳しい受注競争が繰り広げられている。同計画の超高層棟を受注したのは清水建設と三井住友建設。しかし、利益度外視の受注だったとみられており、「特に清水は相当無理な金額で落札したのではないか」と業界ではささやかれる。
受注環境が厳しくなったことに加えて、人手の面でも限界を迎えている。大型工事を抱えていたこともあり、大成建設の売上高はこの3年で2000億円も増えた。「受注環境の厳しさで利益率が下がり、マンパワーの点で消化能力の限界になった」(村田氏)。
実は大成建設のトップが業績不振で辞任するのは2度目だ。現在、特別顧問の葉山莞児氏は、社長だった2001年~2007年に国内建設市場の縮小を見越して、積極的に海外展開を図った。結果として海外土木の大型工事で巨額の損失を計上。2009年4月、最終赤字に転落した責任をとって代表取締役を辞任した経緯がある。
【2020年6月2日17時27分追記】初出時の表記を一部修正いたします。
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