大成建設、好業績でも「社長引責辞任」のなぜ トップ交代の裏で忍び寄る事業環境の悪化

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村田氏辞任の理由は2021年3月期の見通しにある。

決算と同時に公表した2021年3月期の業績見通しは、売上高が1兆4500億円(前期比17.2%減)、営業利益810億円(同51.7%減)と減収減益を見込んでいる。前期に大型の工事が一巡し、2021年3月期は完成工事高が上がらない端境期であること、新型コロナウイルスの影響で、2020年3月期終盤の発注が遅れたことや、期中に受注して工事も完了する短工期の修繕工事が先送りになりそうなことが響いている。

また例年同様、好採算の追加工事や設計変更、自社の原価低減などを期初時点でほとんど織り込んでいないこともある。

中計目標の大幅未達で引責

3カ年の中期経営計画で見込んでいた2021年3月期の業績は、売上高1兆8700億円、営業利益1870億円だった。これに対し、今期の見通しは営業利益810億円と半分以下にとどまっている。

村田氏の社長就任が発表された2015年1月の会見で「王道を歩み、率先垂範を⼼掛ける」と述べていた。会社側の説明によれば、「社長は(現行の)中期経営計画の数字には誰よりもこだわっていた」(コーポレートコミュニケーション部)という。中期経営計画の大幅な未達の責任をとって辞任した格好だ。

つまづきは何だったのか。村田氏は会見で中計未達の要因を「受注環境の厳しさ、工事の消化能力の不足」と説明する。

ここ数年、大手や準大手ゼネコンは受注環境が良好なことから、働き方改革の一環として大型案件の受注に注力してきた。「工期が長ければ、計画的に工事を進められ、休みもとれる」(大手ゼネコンの経営企画担当者)。

だが、大型工事は競争が厳しく、1件失注すれば数百億円単位で売り上げが消えてなくなる。好調だった受注環境も、東京五輪向けの工事が大詰めを迎えた2019年辺りから徐々に風向きが変わってきた。

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