日本は2020年後半再び大きなリスクに直面する 「同調圧力」でコロナ感染を抑えた日本の限界

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「感染の第2波」については全く起こらないことは考えづらいが、その「深刻度」については専門家ではない筆者には全く予想がつかない。だが日本で起こるかもしれないこの第2波は、海外における再感染拡大によって引き起こされる可能性が高いとみている。このため、今後海外からの入国者制限緩和をどう行うかで、リスクは大きく変わるだろう。

これまでの、安倍政権のウイルス問題への対応に問題がなかったわけではない。先に紹介した台湾は、早期かつ強力な公衆衛生政策で、被害を最小限に抑えたのだから大いに見習う部分がある。日本は、事態の変化に対して必要な政策を繰り出す、柔軟な対応という点が特に不十分だったと思われる。ただ、未知のウイルスへの対処はとても難易度が高く、厳しく見ても相対的には悪くなかっただろう。

一方、安倍政権による経済政策については、合格点を与えることは到底難しいと筆者は考えている。第1次補正予算策定の主たるメニューである、「一人当たり10万円支給」は紆余曲折のうえ決まった。ただ、経済政策策定に際して、当初官僚によるプランに依存したため、政治のリーダーシップ・決断力不足によって政策始動が遅れた。

日本経済にデフレリスク直面の懸念

また、経済状況が深刻化している5月後半になっても、所得補償政策は家計に行き届いていない。雇用調整助成金の拡大支給が行われるとみられるが、この経路での家計への所得補償は相当遅れそうだ。マイナンバーなど公的部門のインフラ整備が遅れていた問題を長年放置したツケである。

適切なタイミングで政策が実行されないことに加えて、経済活動の深刻な落ち込みと比べて、財政政策発動が適切な規模で実現していなかったと見ている。対照的に、アメリカにおいては、迅速に複数の政策メニューが決まり、すでに家計部門への大規模な所得補償政策が実現している。

5月27日に固まった第2次補正予算では「家賃補償」「雇用維持のための助成金」などの追加4兆円以上の即効性が期待できる歳出が決まった。また、予備費を含めて国債発行を30兆円規模で追加拡大し、金融財政政策が共に強化された点はポジティブに評価できる。

ただし、これらの対応で、日本経済が今後立ち直るにしても、大規模な財政政策を一足早く行っているアメリカよりはかなり緩慢な回復に止まるだろう。このため、2020年後半に日本経済は、デフレリスクに再び直面すると予想している。そして最大のリスクは、安倍政権の政治基盤が弱体化する中で、金融財政政策を軽視する政治勢力が台頭しつつあることだと考えている。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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