小中学校「オンライン教育格差」が招く真の問題 学校が再開されればいいという話ではない

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それ以上に大きいのはもともとICT教育への舵は切られており、これからの日本を考えると教育は変わらなければならない時期に来ていたということである。

文部科学省は2017年12月に「平成30年度以降の学校におけるICT環境の整備方針について」を公表、新学習指導要領を実施するためのICT環境整備の具体的な内容を示している。2018~2022年度の5カ年で子ども達用のコンピューターを3クラスに1クラス分用意するなど具体的な目標が示されており、単年度で1805憶円の地方財政措置もある。

さらに2019年12月5日には政府が26兆円の新たな経済対策を閣議決定しているが、その中には小中学校にパソコンなどの端末を1人1台配備という案が盛り込まれている。

新たな教育を模索する時期

春先からのコロナ禍で忘れられているかもしれないが、本来、2020年からはプログラミング教育が必修化される予定だった。この流れからすると、コロナ禍で強制的かつ緊急に突入する羽目になったものの、ICT教育は必然だったのだ。

プログラミング教育は従来の、先生が1から10までを教科書どおりに教える教育とは別物だと村上氏は指摘する。外資系IT企業に勤務し、地元の足立区でIT技術を活用した地域課題の解決をめざす非営利団体Code for Adachiを主催する同氏は、「プログラミング教育で学ぶことの1つはトライ&エラー。自分で問題に気づき、修正し、よりよいものを目指すもので、これまでの『言われたとおりにやる、失敗してはいけない』から『間違ってもいい、自律的に考えよう』へ考え方を変えるもの」だと話す。

日本では江戸時代の寺子屋が庶民の教育レベルの底上げに寄与、明治以降の経済発展につながったことから、先生を、すべてを知っている人として神格化し、その人に教えてもらうという受け身の教育が続いてきた。

より多くのモノをより早く、安く作る時代にはその仕組みはよく機能したが、その時代はとうに過ぎ去った。プログラミングを含むICT教育には、子どもたちの学びを変えることで、社会を根本的に変える可能性があるのである。

さらに大人数の授業ではできなかった1人ひとりに合った教え方ができるようになるのではないかという期待もある。不登校や入院中の子どもにも授業参加のチャンスが生まれるだろう。デバイスの有無が教育格差につながる可能性が指摘されているが、その点が是正されれば逆に独自性が格差を埋めていくこともありえよう。

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