コロナでお金に困る人が家計から絞り出す方法 休眠預金のほか生命保険を担保に借りることも

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これらの要件をすべて満たすケースは極めてまれです。引き出そうとしたけれどできなかったという話は聞きますが、引き出せた例はほとんど聞いたことがありません。実際に筆者もかつて、勤めていた会社を退職した後にお金に困って、在職中に積み立てていた確定拠出年金を引き出そうとして失敗に終わった苦い経験があります。

手続き書類が難しく何度も不備で戻り、また加入していた確定拠出年金では手続きのための本人確認書類として印鑑証明書が必要で、当時持っていなかった実印を慌てて作って印鑑登録をするなど、2、3カ月かけて手続きをしました。しかも揚げ句の果てに「要件に該当しない」との理由で脱退一時金を受け取れない旨の通知が送られてきたときには心の底からがっかりしたものです(今思えば勉強不足だったのが原因ではありますが)。

すぐにお金を引き出す手段として、確定拠出年金はあまり現実的ではないと考えておいたほうがよいでしょう。

ただ、この先に出て行くお金を止めることはできる可能性があります。個人型(iDeCo)の場合は掛金を毎月積み立てるのをやめて、それまでに積み立てたお金の運用指図のみすることができます。あるいは年に1回に限り、積み立てる金額を減らすことができます。例えば、それまでは毎月1万円を掛金としていたものを、来月から毎月5000円にするような手続きです。

一方、企業型の確定拠出年金では、勤務先の制度によってしくみが異なり一概にはいえませんが、基本的には積み立てる掛金をゼロにする、ストップすることはできません。企業によって定められた最低金額までなら、掛金を減額することはできます。

何を引き出すにしても焦りは禁物

ほかに、投資をしている人なら株や投資信託を売却する、このタイミングでは株価が下がっていて損失を出したくないなら、証券口座に入っている預り金を出金するなど、持っている資産によってはまだ引き出す余地のあるお金があるかもしれません。

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しかし何を引き出すにしても、焦りは禁物です。

保険にしろ確定拠出年金にしろ、これまで持っていたお金の形は、それぞれに意味や理由をもって自分で契約したものであるはずです。そのときの考えを今一度思い出して、解約して使っても問題ないか、長期的な視点でも見直す必要があります。

コロナ禍で冷静さを失ってすぐに現金化してしまい、長期的にみてもったいないことになるのは避けたいところです。コロナショックから経済が回復する見通しがつきにくいなかではあるものの、この時期だからこそ、先のことも意識しながらお金をやりくりしていきましょう。

加藤 梨里 FP、マネーステップオフィス代表取締役

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かとう りり / Riri Kato

保険会社、信託銀行などを経て2014年にファイナンシャルプランナーとして独立開業。家計相談、セミナーや雑誌・ウェブサイトでの執筆を中心に活動。慶應義塾大学SFC研究所上席所員として、健康増進とライフプランの関係をテーマに研究活動も行っている。http://moneystep.co/profile

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