マレーシア感染抑制でも全く油断できない現実 ロックダウン「緩和」後も第2波警戒で自粛続く

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観光スポットとしておなじみのツインタワーを見渡せる中心部の公園も、普段の混雑が嘘のように人気はなく、ようやく許可されたジョギングや散歩などに繰り出す人々をちらほらと見かける程度。遊具には規制線が張られて使用できないように制限されているほか、ベンチにはテープでバツマークが張られており、デートに訪れるカップルも隣同士に座ることはできない。1メートル以上のソーシャルディスタンスを保って別々のベンチに座り声を張って会話をするという、少々シュールな光景も見られた。

警察官や警備員が厳重に警戒をして回っており、普段は大勢の家族連れでにぎわい、子供たちが元気に駆けずり回っていた光景も、黄色いテープがあちらこちらに張りめぐらされ、ひっそりとしている。これまでの日常が変わってしまったことを改めて印象づける。

普段は観光客や家族連れでにぎわう、クアラルンプール市内中心部の公園も人気はなく閑散としていた。公園内のベンチにもソーシャルディスタンスを保つための注意書きが貼られている(筆者撮影)

「自粛」ムード続くも第2波への警戒に緊張感

マレーシアは今、1カ月に及ぶラマダン(断食)の最中で、例年であればラマダンセールなるものが大々的に行われ、日中は飲食を控えるイスラム教徒も大家族が連れ立ってショッピングに繰り出す光景がおなじみだ。しかし、活動制限令が「緩和」されてもなお、通常の混雑時とは異なる光景が広がる。いまだ、シャッターを下ろした店舗も少なくなく、例年は店頭にずらりと並ぶラマダンを祝うデコレーショングッズや贈呈用のギフトボックスなども、今年は控え目に陳列されている。

政府は、今年のラマダン明けの祭り(ハリラヤ)は「自宅」で祝うように、と口を酸っぱくして言い続けている。「緩和」はするものの引き続き「ステイホーム」を原則として可能な限り自粛をするように、との呼びかけに多くの国民は応じている。

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しかし、一部ではラマダン明けの祭りに併せて帰省を試みたり、ショッピングセンターに子連れで出かける家族連れが目立ち始めたりするなど、政府も少しずつ「緩和」による市民の気の緩みを警戒し始めている。政府は、このまま子連れでショッピングモールに出かける事例が増えてゆくならば、子連れを禁止する措置をすることも考えざるをえないと警告をするなど、緊張感は少しずつ増している。

マレーシア保健省のヌール・ヒシャム・アブドラ保健局長は、第2波の到来については「国民の努力次第」と強調、仮に感染者数が再び増加に転じた場合、再び活動制限令施行に戻る可能性を示唆している。第2波の脅威を常に意識しながら、経済とのバランスを保つ活路を見いだしていくほかはない

活動制限令が緩和されて店内での飲食が解禁された後も、引き続きテイクアウトのみの対応とする飲食店も少なくない(クアラルンプール市内、筆者撮影)
海野 麻実 記者、映像ディレクター

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うんの あさみ / Asami Unno

東京都出身。2003年慶應義塾大学卒、国際ジャーナリズム専攻。”ニュースの国際流通の規定要因分析”等を手掛ける。卒業後、民放テレビ局入社。報道局社会部記者を経たのち、報道情報番組などでディレクターを務める。福島第一原発作業員を長期取材した、FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『1F作業員~福島第一原発を追った900日』を制作。退社後は、東洋経済オンラインやYahoo!Japan、Forbesなどの他、NHK Worldなど複数の媒体で、執筆、動画制作を行う。取材テーマは、主に国際情勢を中心に、難民・移民政策、テロ対策、民族・宗教問題、エネルギー関連など。現在は東南アジアを拠点に海外でルポ取材を続け、撮影、編集まで手掛ける。取材や旅行で訪れた国はヨーロッパ、中東、アフリカ、南米など約40カ国。

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