マレーシア感染抑制でも全く油断できない現実 ロックダウン「緩和」後も第2波警戒で自粛続く

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1カ月半以上にも及んだ罰則付きの厳しい活動制限下でほぼ外に出ることもかなわず鬱憤のたまった国民たちが、一斉にショッピングモールや公園などに繰り出すのでは――筆者はそう覚悟していたものの、その懸念はあっけなく吹き飛んだ。

待ちに待った店内での飲食もようやく許可されたにもかかわらず、喜び勇んで営業する店はむしろ少数派、引き続きテイクアウトかデリバリーのみの対応に自粛する飲食店が非常に多かった。「まだ市民の方に安心して飲食してもらうには不安が残る」と、客の安全を優先する声とともに、政府が飲食店の再開に向けて示した厳しい項目を遵守する必要があることにハードルがあったことも大きな原因のようだ。

というのも、マレーシア政府は「緩和」後に飲食店が営業再開するに当たって、以下のような厳しい条件を課している。

①各テーブルの間は2メートル以上の間隔を離す
②各テーブルの人数を制限し、テーブルにその制限人数を記載
③レジには消毒液を置き、1メートル以上の間隔をあけるラインを床に記載
④顧客が使ったテーブルは必ず消毒
⑤店のスタッフは全員マスク着用
⑥顧客の入店時に必ず体温測定を実施

あらゆる業種が営業再開に厳しい条件

さらには、客の名前、電話番号、入店時間、ID(パスポート番号)などを記入し、後に陽性患者が発覚した場合に、同じ店内にいた客を追跡調査できるようにするなど、徹底した感染抑制策の遵守を求めている。

飲食店だけではない、服飾店や雑貨店、家電量販店に携帯ショップに至るまで、あらゆる業種の店舗が営業再開するに当たって、国家安全保障委員会が定めた標準運用手順(SOP)を遵守することが求められている。ショッピングモール内では制服姿の警察官が目を光らせ、各店舗がきちんとルールを遵守したうえで営業しているかを確認する姿も目立つ。

飲食店などのレジの前では、1メートル以上のソーシャルディスタンスを保つ注意書きを掲げている。フェイスシールドにマスク厳重装備をしている店員も多い(クアラルンプール市内、筆者撮影)

ちなみに、「緩和」に当たっては各州の足並みも見事にそろわぬ結果を招いた。一部の州は「緩和」を見送るなどして引き続き、活動制限令にのっとった方針を表明したほか、政府の「緩和」宣言に従うとした首都クアラルンプール市内でも、「緩和」宣言で事実上営業が許可されたにもかかわらず、営業開始をしばらく見送るとの張り紙をし、店を閉めたままの店舗も少なくなかった。

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