テレビや雑誌などでは「貧困」がコンテンツにされやすいが、「女性の貧困」、特に性風俗や売春で生活費を稼いでいるケースなどはウケがよく、人気がはっきりと数字に反映される。
女性の、特に性産業に従事する人の貧困ばかりを扱うメディアたちは貧困問題を報じたいのではない。彼女たちを二重、三重に性的搾取しているだけであり、肝心な「女性が陥りやすい貧困」の背景には触れようともしない。
解消されない「男女の賃金格差」
先述のどおり、日本ではまだ「女性が自由に職業選択をしながらひとりで生きていく」環境が整っているとは言えない。もちろん自分の思うようなキャリアを実現している女性も存在するが、そうはできない女性もまだまだ多い。
特に「女性が家庭に入ること」が一般的だった時代に結婚・出産をした女性たちは、就業経験がないまま「女性も働くのが普通」の時代に入ってしまった。しかし、例えば50代で職歴のない女性が就労の意思を持っていても、「ひとりで生きていけるだけの収入」を得られる仕事に就くことは難しい。
就労が困難な状況は夫婦共働きならまだしも、シングルマザーであればなおさら地獄だ。「労働政策研究・研修機構」が2018年に調査したデータによると、最低限度の生活も維持できないと考えられる統計上の境界線「貧困線」を下回っている世帯の割合は、母子世帯の貧困率は51.4%で、過半数を超えていた。父子世帯の22.9%、ふたり親世帯の5.9%と比べても、母子世帯の貧困率が圧倒的に高いことがわかる。
さらに、可処分所得が貧困線の50%を満たない「ディープ・プア」世帯の割合は、母子世帯が13.3%、父子世帯が8.6%、ふたり親世帯が0.5%だ。
困窮して追い詰められた女性の中には、昼の仕事とは別に売春や風俗の仕事を掛け持ちすることでなんとか食い繋ぐ人たちもいる。彼女たちの仕事は楽に稼げるものではないし、極めて高いリスクを伴う。それでも、生活を支えるためにはこうした働き方を選ばざるを得なかったのだ。
家父長制における「女は家庭に入るもの」といった考えは、女性によって培われたものではない。にもかかわらず、時代の変化の狭間に取り残された女性たちは「働く気があれば仕事は何でもある」「専業主婦で楽をしてきたのだから仕事に就けなくても自業自得」などと、安易に切り捨てられたりする。
「今の日本に男女格差はない」は、本当だろうか。
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