安倍首相は5月4日の記者会見で、観察研究としてアビガンが3000人近くに投与されたと述べた。この時点での陽性者数は約1万5000人なので、少なくとも5人に1人の割合で投与された計算だ。一方、日本医師会の横倉義武会長は、アビガンは軽症者に投与されている、という。
これについて、厚生労働省治験推進室の担当者は取材に対し、「確実に服薬を管理できるよう入院下で内服している。厚労省としても使える人には使ってもらいたいが、勇み足はしたくない。副作用についても懸念しているところはある」と説明している。
それでも問題は残る。この“観察研究”では、薬の有効性が証明できないことだ。隈本教授は次のように指摘する。
「3た」の論理で話が進んでいる
「いま行われている観察研究とは、希望する患者に投与して経過を見るもので、これでは有効性の判断はできません。薬を飲んでみ『た』、治っ『た』、だからこの薬は効い『た』んだと考えるのは、『3た』の論理と言って、雨乞いでもイワシの頭でも成立する話です。薬の有効性を確かめるためにはプラセボ(偽薬)を飲んでもらう対照群を置かないと。しかも誰にプラセボが投与されたかは医者にもわからない二重盲検が必要です」
「患者の命と体を使わせてもらって研究しているのに、効くかどうかの判定に使えないデータしか取れないのは、たいへん非倫理的です。こんなやり方で承認されるようなら、従来のような比較臨床試験は不要になる。これまでの海外の比較臨床試験の結果を見てもゲームチェンジャーになるような薬ではないことがわかると思います」
取材:木野龍逸=フロントラインプレス(Frontline Press)
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