勝負に勝つために絶対必要な「感覚力」の中身 伝説の勝負師はなぜ2秒で判断できるのか?

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雀鬼会の麻雀は、2秒以内にツモ切りする。つまり頭で考えて打つ麻雀じゃない。感性と感覚で打つ麻雀だ。勉強ばかりしてきた人にはこれが難しい。頭で、理屈で考えてしまうから、どうしても時間がかかる。この「遅さ」が、実生活のあらゆるところに出てしまう。周りの人たちの様子や変化に気づくことも、それに対応したり、何か用意したりすることも遅い。

感覚や直感というのは、一瞬だ。雀鬼会は麻雀もそうだけれども、活動全体の中で「感覚」を重んじている。感覚を磨くことが人間として、というよりも生き物として大事だ。自然の動物たちを見てごらんよ。彼らは頭で考えて行動しているだろうか? そんなことをしていたら、いざというときに襲われて食われてしまう。あらゆる現象や状況の変化に、感性と感覚で瞬時に対応することができなければ生き残っていけない。

雀鬼会ではすべてにおいてリズムが大事になる。麻雀にしてもそのほかの活動にしても、日々の会話にしても。そのリズムに、勉強ばかりしてきた人間ほど乗り遅れてしまう。

知性を重視して、知識ばかりため込んできたツケがまわっちゃったんだ。だから思考も行動も重いし、鈍い。「知識や情報をため込みすぎて、自分を重くしているんだよ」とアドバイスする。そして「よけいな知識なんて捨てちまいな。自分を軽くしな」と言ってやるんだ。

力んでつかむから素早く離せない

ところが、自分が抱えているものが実はガラクタで、役に立たないシロモノだとわかっても、それを捨てることができない。捨てるということは、それだけ難しいことなんだ。

雀鬼流の麻雀では、姿勢や立ち振る舞いを重視している。力を抜いて自然体で卓に向かう。上家が牌を捨てたことを確認し、静かに手を伸ばして力を入れず優しくツモる。流れるように牌を自分の元まで引き寄せ、目の前で牌を確認し、切る牌か自分の手元に残すかを一瞬で判断する。そしてやはり自然体のまま、流れるようにスッと自然に捨てる。

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何気ない一連の動作だけれど、たいていは肩や腕などに、余計な力が入ってしまう。「力を入れて握ったら、次の動作ができないじゃないか」と教えている。次の動作とは、変化に対応することだ。私から見ると牌が指にくっついているように見える人がいる。指に力が入りすぎているから、捨てるときもスムーズに切ることができない。

卓にたたきつけるように力を入れないと捨てられない。それはムダな力を使っているということ。「おいおい、そんなふうにつかんだら、牌が苦しいだろう」と言ってやる。

力んでつかむ人は、その深層心理の中で「何かを得たい」という気持ちが強い。そして一度つかんだものを「離したくない」という気持ちも強い。だからツモから牌を切って捨てるまで、全体に力が入ってしまう。

まず姿勢を正して、力を抜く。力みを取りフォームを正すことで、心の中の欲の部分が消えていく。

桜井 章一 雀士、経営者、作家

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さくらい しょういち / Shoichi Sakurai

1943年東京・下北沢生まれ。大学時代に麻雀を始め、裏プロとしてデビュー。以後、圧倒的な強さで20年間無敗で勝ち続け、「雀鬼」の異名をとる。現役引退後は、「雀鬼流漢道麻雀道場 牌の音」を開き、麻雀を通して人としての道を後進に指導する「雀鬼会」を始める。モデルになった映画や漫画も多く、講演会などでその雀鬼流哲学を語る機会も多い。著書に『負けない技術』『流れをつかむ技術』『運を支配する』『感情を整える』『群れない生き方』など多数。

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