苦境の「スナック」ママたちが飛び込んだ新境地 「オンラインスナック横丁」は定着するか

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「支援金を集めることも考えましたが、政府と同じように一時的に支援したところで、地域社会の交流やサードプレイスとしての役割を果たしてきたスナック文化を長期的に守っていけるわけではありません。もっと将来を見据えた新しい取り組みが必要と考え、ママの素晴らしい接客術をオンラインで提供することを考えました」(五十嵐氏)

当初はカラオケ企業も巻き込んで、リアルなスナックの雰囲気を提供したいと考えていたが、スピード感を重視した結果、「ママの接客」というスナック本来の武器一本で勝負することに決めた。

オススメは「二次会利用」

サイトのイメージは、さまざまな地域のスナックが軒を連ねる横丁。2軒、3軒とはしご酒ができ、各地のママの方言や地元話が楽しめるなど旅するように意識した。ITが苦手なママでも扱いやすく、入店時に相手をチェックしたり、仮に迷惑な客が入ってきたら追い出せる機能があり、PCであればブラウザーから参加できるWeb会議ツール「Whereby(ウェアバイ)」を利用している。

現在は10人のママが参加している(写真:オンラインスナック横丁提供)

前述の通り、「ママと1対1」や「貸し切り」などさまざまな使い方ができる。五十嵐氏のお勧めは「二次会利用」。コロナ禍で定着したオンライン飲み会は、「いつも同じメンバーで話が尽きる」「切り上げるタイミングがなくてダラダラ飲んでしまう」といった側面があるが、スナックを利用することで雰囲気を変えることができる。オンラインの場合、「スナックは入りづらい」という人たちも気軽に利用しやすい。

「今後も継続して新たなスナックの加盟を募集しています。収入源としてだけではなく、アフターコロナに来店していただけるような新しいお客様との出会いの場として活用していただければ」と五十嵐氏は話す。

ひなぎくも、実店舗は5月末までの休業を予定しているが、「お店が再開しても、お客様が来店されるステップとして、休業日を利用するなどしてオンラインスナックはできる限り続けていきたい」(酒井氏)と語る。

オンラインの場合、スナック独特の雰囲気を作り上げるのは容易ではないだろうが、酒井氏のようにこれを逆手に「ありのままのママ」を見せることもできるし、今後ママがオンラインでの接客になれてくれば、オンラインならではの体験を楽しめるかもしれない。

課題も残っている。現在、横丁に参加しているママたちのようにデジタル機器の利用になれている人はすんなりオンラインスナックを導入できるが、スナックも高齢化が進んでおり、デジタルツールをなかなか使いこなせないというママや顧客も少なくない。そうした層こそ、営業自粛中はスナックというコミュニケーションの場を失い戸惑っていることだろう。

オンラインスナック横丁で成果を出し、少しずつ高齢層の利用を促せるか。ウィズコロナ、アフターコロナにスナック文化をつなげるための挑戦は始まったばかりだ。

安楽 由紀子 フリーランスライター

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あんらく ゆきこ / Yukiko Anraku

1973年、千葉県生まれ。国際基督教大学卒業後、編集プロダクションを経てフリーに。芸能人、スポーツ選手、企業家へのインタビューを多数行う。

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