Netflix「愛の不時着」の大ヒットは必然だった 韓流ファンだけではなくアメリカでも高評価

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北朝鮮軍のリ・ジョンヒョク中隊長役のヒョンビン(画像:Netflixオリジナルシリーズ『愛の不時着』独占配信中)

2020年5月7日に発表された2020年1~3月の売り上げは前年同期に比べ7.6%増加した1203億ウォン(約105億円)。そのうちコンテンツのセールス額は売り上げの約半分を占める669億ウォンを計上し、同期史上最高額でした。海外セールスは上昇傾向にもあり、経営の柱にしている部門でもあります。

公表している経営戦略の中でNetflix強化策を挙げ、Netflixには『愛の不時着』と同じくヒョンビンが主役の『アルハンブラ宮殿の思い出』などもあります。世界ヒットドラマの1つである『ゲーム・オブ・スローンズ』を生み出したHBOなどハリウッド勢との共同制作にも力を入れ、世界市場の業界内では知る人ぞ知る存在。「スタジオドラゴン作品であれば、ヒットも当然」といった具合です。

「字幕の壁」が崩れつつある

また必然であるもう1つの理由に「字幕の壁」が崩れつつあることも挙げられるでしょう。記憶にまだ新しい、2020年アカデミー賞受賞作である韓国映画『パラサイト』ポン・ジュノ監督が授賞式後の記者会見で語った言葉がまさにそれを物語っています。

字幕の付いた外国語の映画が作品賞をはじめ4部門の賞を獲得したことについて「(字幕の)壁はすでに崩れつつある状態で、ユーチューブのストリーミングやインスタグラム、ツイッターなど、われわれを取り巻く環境は、すでにすべてがつながっています。今後は外国語の映画がこのような賞を受賞することが、事件として扱われなくなるだろう」と、考えを述べたポン・ジュノ監督。

変わりつつある空気感を感じ取っているからこその発言だろうと思います。映画『パラサイト』がその象徴として決定打となったことも今回の『愛の不時着』ヒットが証明しているのではないでしょうか。

ちなみに『パラサイト』でソン・ガンホの妻役を演じたチャン・ヘジンが『愛の不時着』では北朝鮮のトップセレブ役で出演しています。役柄のギャップの違いについて、アジア発のコンテンツだろうと国を隔てて語り合える。そんな時代が始まったのだと思わずにはいられません。

長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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