福井俊彦・キヤノングローバル戦略研究所理事長(前日本銀行総裁)--アジア最適通貨圏の形成で日本は先導役を演ずべき

福井俊彦・キヤノングローバル戦略研究所理事長(前日本銀行総裁)--アジア最適通貨圏の形成で日本は先導役を演ずべき

国内外の景気の現状認識について、お聞かせください。

1990年代の日本の経験が参考になっていることもあり、金融機関の不良債権については欧米中心に比較的順序正しく、ある程度スピード感を伴った処理が行われています。

一方で、世界中の企業は一斉に生産と雇用を絞り、在庫調整を急速に進めました。これらを背景に世界経済がほぼ底を打ち、新しい芽生えを感じながら進む段階に入ったとの雰囲気が出てきたのが現状でしょう。

ただ、今後をめぐってはかなり不透明感が強い。日本では2009年2月時点の鉱工業生産の水準が1年前から4割近く落ち込みました。各国とも程度の差こそあれ、こうした急激な調整をした後ですから、大きな需給ギャップが残っています。

日本が90年代に直面したように、過剰設備、過剰雇用、過剰借り入れの調整と、その一方で新規の有効需要を見いだしていくという、苦痛に満ちた過程が始まっています。誰もが先行きをクリアに見通せる状況ではありません。

--「出口戦略」をめぐる議論は時期尚早でしょうか。

世界的に見て、当面は下振れリスクに十分注意しながら金融政策を行う段階でしょう。緩和策の効果を慎重に見極めつつ、エグジット(出口)のタイミングを正確につかむのが大事ですね。各国が順序正しく出口戦略へ移行することは、世界経済全体のテイクオフ(離陸)がうまくいくか否かの分かれ目にもなります。そうした意味で、国際的なコーディネーションが必要でしょう。

今の勢いからするとおそらく、エマージング(新興)国のほうが主要国に先行して出口戦略へと移行するでしょう。今までのように、つねに先進国が先を走り、それに各国が歩調を合わせるというモデルではなくなった。特に大きなエマージング国が先にエグジットしたならば、世界経済に対しても責任を持ちながら金融政策をやってもらわなければならない。そうした意識変換が必要です。

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