福井俊彦・キヤノングローバル戦略研究所理事長(前日本銀行総裁)--アジア最適通貨圏の形成で日本は先導役を演ずべき
おまけに、先進国の資本主義は成熟化し、新しいモデルを模索しなければ成長できない状態です。
日本は特に財政面での宿題が重い。人口減や少子高齢化の進行もディスアドバンテージです。だけど、悲観材料ばかりではない。最も成長力の高い近隣アジア諸国との相互依存関係を強めることで、成長する機会が多く残されています。
--政府が成長戦略を描くことが必要、との指摘がありますが。
成長戦略を他人に求めてばかりいるのもどうか。日本の将来はどうあるべきかをもっと真剣に皆で議論し、その議論で集約される目標に沿って、共に行動することが大事だと思いますね。グローバル化時代の生存競争は厳しいものなのです。
日本の果たすべき役割をめぐる議論は不十分
--環境問題は日本が克服すべき課題であると同時に、新たな成長への糸口にもなりうるのでしょうか。
マクロ経済の観点では、経済全体の発展を支える要素は資本、労働、イノベーションの三つでした。これからは資本、労働、そして、地球環境問題による制約の突破プラスイノベーションの4点。イノベーションは環境問題突破のためにも活用していく。市場経済への参加国が多くなり、先進国はエマージング国とスクラムを組んで対応しなければ問題解決ができなくなったのです。
企業には自らのイノベーションの力の相当部分を環境対応に回す必要が出てきています。しかし、コストをかけたものの、結果としてコスト倒れに終わらないようにするため、グローバルなメカニズムの構築について、各国は政策の方向性をそろえなければならない。