5月8日に発表された、アメリカの4月分雇用統計では約2000万人の雇用減となったが、株式市場は「織り込み済み」としてほとんど反応しなかった。甚大な雇用削減は、雇用者数の13.5%に達した。これは2011~2020年の約10年間に増えた分に相当するが、わずか1カ月でその雇用が一挙に失われたことを意味する。家計へのサーベイである失業率も、4月だけで10%以上も上昇し、約15%と戦後最も高い水準まで悪化した。
このブラックスワン級ともいえるアメリカの雇用削減は、いくつかの観点から評価できる。1つは、戦後最大規模の経済ショックが労働市場にダイレクトに表れたことだ。アメリカでは経営者の都合による雇用削減が簡単であることを改めて示している。なお、4月に増えた失業者の8割前後は、これを一時的な失職と認識している。
6月にも失業率は10%前後にまで改善?
もう1つの側面は、今回の大規模レイオフ(一時解雇)は、政府による失業保険給付の拡大がもたらしたということである。政府の異例の対応で、低賃金労働者にとって、失業給付上乗せの恩恵が大きく一定期間相当な所得が得られるため、「自発的失業」が相当生まれたとみられる。失業率の急上昇は、政府によるアグレッシブな財政政策の副産物ともいえる。
この2つの点は、仮に今後経済活動再開がスムーズに実現して、併せて緊急措置としての失業保険の上乗せが終われば、短期間で大規模に失われた雇用の多くが、早急に復活する可能性を示している。例えば、早ければ6月にも失業率が10%前後まで大きく低下することは、十分想定できるだろう。
そして、アメリカ株の反発が5月に入っても続いているように見える主たる要因は、経済活動再開への期待だろう。ヨーロッパ諸国、アメリカの一部の州では、外出制限など厳しい措置が緩和されつつある。ただ、緊急事態宣言が発動された後すら日本では行われなかった厳しい外出や移動制限などが、日本と同程度に緩められただけにすぎない。
また、アメリカでは新型コロナウイルス治療薬の開発が進んでいるとの報道をきっかけに大手医薬メーカー株が大きく動き、アメリカ株市場全体を左右する日が4月から散見されている。もちろん、治療薬の開発は患者の命を救うという意味では朗報だが、治療薬だけではスムーズな経済活動再開には必ずしも直結しない。やはり、ワクチン開発が実現しなければ、経済活動が広範囲に正常化するのは難しいだろう。
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