継続会最大の課題は、株主が監査付きの決算書なしで配当や取締役等の選任について意思決定しなければならない点だ。株主は会社の成績表である決算書をもとに、配当や取締役選任について議決権を行使する。だが、肝心の成績表がないと、そうした判断も難しくなる。
1期前の決算情報だと、配当可能額がわからないほか、当然のことながら2020年1~3月の新型コロナウイルスの影響も判断材料にできない。
こうした懸念を裏付けるように、機関投資家向けに議決権行使の助言を行っているISSは継続会に難色を示している。継続会を選択した企業が提出する剰余金処分などの議案について、「責任ある株主にとって、計算書類および監査報告書が提供される前に(配当について)判断することは困難」と指摘。「賛成でも反対でもなく棄権票の『投票』を推奨」するとして、事実上、株主総会の延期を求めた格好だ。
継続会の是非めぐり議論百出
継続会の是非については専門家の間でも意見が分かれている。企業法務に詳しい山口利昭弁護士は、「監査なしに機関投資家が多数の企業決算の適正性を判断するのは困難。機関投資家にはスチュワードシップコードに基づいて、議案に対する賛否の理由まで開示する実務が進んでいるが、最終的な受益者に対して説明がつかなくなる。監査を後回しにする総会は一律延期するべきだ」と提案する。
一方で、「アセットマネジメント会社では『(企業が)出せる情報をなるべく出してくれれば、決算短信などから暫定的にROEなどを計算して議決権行使できる』と話しているところもあり、柔軟な体制をとるところが多い」(京都大学の川北英隆名誉教授)のように、継続会の影響は実際には大きくないという見方もある。
また、「継続会にも過去に十分な実例があり、実務が確立している。いまさら裁判所が出てきて継続会が不適合ですと言うリスクは事実上ゼロと言っていい。むしろ株主にとってどの選択肢がリーズナブルか考えるべきだ」(澤口実弁護士)と、継続会の実施に向けて企業の背中を押す意見もある。
コロナ禍における株主総会のあり方をめぐって、まさに議論百出の様相だが、金融庁や法務省は「最終的には各企業がそれぞれの事情に応じて判断すること」と企業側の判断にゆだねている。
6月下旬の総会シーズンは刻一刻と迫っており、総会の開催に必要な手続きを考慮すると、企業に残された時間は少ない。前代未聞のパンデミックを前に継続会か延期、それとも例年通りの開催なのか。企業の判断が注目を集めている。
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