シャープ、「鴻海流再建」にただよい始めた暗雲 乏しい研究資金、4年経っても育たぬ成長事業

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

2021年3月期の業績も下押し圧力が強まっている。中国にある顧客のサプライチェーン(供給網)や工場の稼働は足元で回復しつつあるものの、肝心の個人消費が世界的に落ち込むとみられるからだ。

シャープは5月下旬に発表予定だった新しい中期経営計画の発表を延期。5月19日に2020年3月期決算を発表する予定だが、2021年3月期の業績予想を示せるか注目される。

だが、シャープの業績低迷の根本原因は新型コロナだけではない。2016年8月に台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下になってから4年近く経つが、既存の家電事業や液晶事業の採算を改善させた以外、新たな収益源が育っていないのだ。

「鴻海流リストラ」で経営再建

シャープは過去の液晶パネルへの大規模投資が裏目に出て、2010年以降、数千億円単位の赤字を連発。2016年3月期には債務超過に陥り、信賞必罰の実力主義に基づく給与や割高だった資材の調達先変更など、鴻海流リストラで経営再建を進めてきた。

鴻海が送り込んだシャープの戴正呉会長兼社長が行った徹底的なコスト削減の結果、2018年3月期決算以降は黒字が定着。新型コロナのような経済ショックが起きても、過去のように簡単に大きな赤字を出さない体質に改善した。

しかし、新規事業として掲げる高精細な8K関連事業やAI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)を組み合わせた「AIoTプラットフォーム」事業は、理念先行型で柱の事業となるような大規模な収益化はまだできていない。「ビジョンは壮大だが、具体的にどのようなビジネスモデルを構築してマネタイズできるのか、まだみえてこない」との声が社内から漏れ聞こえる。

そんな中で利益を安定的にあげていくためには、コスト削減を中心に進めるしかないのが実態だ。聖域なきリストラは、技術のシャープの本丸である研究開発費にも及んでいる。

次ページ見劣りする自己資本比率
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事