トヨタ、コロナ禍の「利益8割減」に透ける覚悟 研究開発と設備投資は前期並み水準を維持

✎ 1〜 ✎ 82 ✎ 83 ✎ 84 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

販売回復のカギを握るのは2大市場の中国とアメリカだ。中国は2019年に市場が8%減となる中で、トヨタは過去最高の162万台(2018年比9%増)を売り、初めて日本の販売台数を上回った。日産自動車を抑えて日系メーカーの首位にもなった。

新型コロナ問題で1月以降販売が落ち込んでいたが、4月には販売台数が前年同月比で0.2%増にまで回復。「カローラ」や「レビン」、「RAV4」といった主力車の新型車販売が好調だという。

アメリカでは、トヨタは2019年に238万台を販売し、シェアは14%と全メーカー中3位。最近では収益性の高いSUV(スポーツ用多目的車)や高級車レクサスの販売を伸ばし、ドル箱市場としての存在感は大きい。

トヨタのアメリカ販売は4月に前年同月比54%減と大きな落ち込みだったが、4月が底になると想定する。州によって経済活動の再開状況は異なるものの、5月11日から北米の生産を段階的に再開。近執行役員は「アメリカや欧州では稼働が戻り、回復の芽が見えている。販売の機会を逃さずに今の前提に上積みできるようにしていく」と話す。

未来の種まきにアクセスを踏み続ける

未曾有の事態に陥っているトヨタだが、豊田社長は「リーマンショック時よりも販売台数の落ち込み幅は大きいが、黒字は確保できる見通しだ。コロナの収束後に経済復興の牽引役としての準備は整っている」と述べ、企業体質の改善が進んでいると強調した。

リーマンショックが襲った2009年3月期は販売台数が前期比で12%近く減り、4610億円の営業赤字に転落。2009年6月に就任した豊田社長の下で、それまでの拡大路線を見直し、経営環境が悪化しても「持続的成長」ができる会社を目指し、「競争力強化」の取り組みを進めてきた。

豊田社長は緊急事態宣言後、県外への移動を避けるため、愛知県の研修所で仕事をしていることを明かした上で、「移動時間80%減、会議時間30%減、会議資料50%減になった」と語った(オンライン会見の動画サイトから引用)

2020年3月期決算は売上高が29兆9299億円(前期比1.0%減)、営業利益が2兆4428億円(同1.0%減)で着地。売上高に対する営業利益率は2019年3月期と同水準の8.2%をキープした。

【2020年5月13日10時12分追記】初出時、売上高の数字が誤っていました。お詫びして訂正いたします。

新型コロナウイルスによる販売台数の減少や金融事業における貸倒引当金などの積み増しで営業利益が1600億円下押しされたが、原価改善の努力や経費の低減により通期では2150億円をひねり出した。そのほか、減価償却方法の変更で営業利益が1700億円かさ上げされたことも結果として寄与した。

2021年3月期に大幅な減収減益を見込むトヨタだが、研究開発費は1兆1000億円(前期比1%減)、設備投資は1兆3500億円(同3%減)とほぼ前期の水準を維持する。豊田社長は「新しいトヨタに向けた、未来の種まきにアクセスを踏み続ける」と強調した。

リーマンショック時の2010年3月期は設備投資を前期に比べ55%、研究開発費も同20%削減するなど止血に動いた。結果として赤字から回復し、その後、1ドル83円の超円高に見舞われた2013年3月期でも1兆3000億円を超える営業利益を確保することもできた。だが、「体重を落としスリムにはなったものの、必要な筋肉まで落としてしまった」という反省が豊田社長にはあった。

次ページコロナを機に自動車業界はどうなる?
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事