新型コロナが引き起こす「MMTブーム」の第2波 パンデミック収束後の「新たな経済危機」とは

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③ コロナ危機との関連

本書は、コロナ危機に対する処方箋、そしてアフターコロナの展望まで扱っている。MMTの解説だけなく、コロナ危機を論じた書としても読めるのだ。

コロナ危機においては、医療体制を整備したり、医療物資を確保したりするうえでも、また、貧困、失業、倒産を防ぐうえでも、結局、財政支出の拡大が不可欠である。金融政策にも一定の役割はあるが、やはり重要性の比重は、圧倒的に財政政策にある。財政政策を最も重視するMMTは、コロナ危機対策のための理論であると言ってよい。

加えて、森永氏は、MMTをベースとしつつも、MMTの枠を超えて、コロナ危機に対するプラグマティックな処方箋を的確に描いてみせている。とくに、MMTの論者が否定的なベーシック・インカムについて、コロナ危機対策として試験的に導入することを提案しているが、これは森永氏のオリジナルな主張である。

さらに森永氏は、アフターコロナの展望として、所得格差と金融バブルの問題に焦点を当てつつ、「新しい経済学」の誕生を予告している。実に的確に、時代を読んでいると感嘆を禁じえない。

消費増税が強力なデフレ効果があったことを分析

④ 消費税の問題

コロナ危機が覆い隠してはいるが、わが国の経済は、パンデミックが襲来する以前に、昨年10月の消費税率の10%への引き上げによって、大きな打撃を受けていた。これは、MMT「第1波」の中で、筆者を含むMMTの支持者たちが予測し、繰り返し警告してきたことであった。消費税には、国民の購買力を奪う以上の意味はない。財政健全化や社会保障財源の確保といった理屈付けは、いずれも根本的に間違っているのだ。

「第2波」に位置づけられる本書は、消費増税がどれだけ強力なデフレ効果をもつものであったかを、データによって明らかにしている。その中でも出色なのは、軽減税率がデフレ効果をもつという分析である。詳細は本書に譲るが、消費税率の軽減がデフレ効果をもつというパラドクスを指摘した森永氏の分析能力の高さには、敬服するほかない。

以上、本書の特長を4点に絞って述べてきたが、最後に、本書が刊行されることの重大な意義を付け加えておきたい。

猛威を振るった新型コロナウイルス感染症も、いずれは、収束に向かうであろう。しかし、注意しなければならないことは、パンデミックが収束した後にこそ、新たな経済危機のリスクが高まるということだ。

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