「PCR検査せよ」と叫ぶ人に知って欲しい問題 ウイルス専門の西村秀一医師が現場から発信

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あらためて検査の目的は何かということを、はっきりさせてほしい。臨床(患者の治療)のためなのか、感染管理をしたいというのか、疫学調査をしたいというのか。感染管理のためであれば、大量の活性を持ったウイルスの排出を見なければならないが、それを見ていないという意味では限界がある。疫学的な調査に使えという話であれば、それこそ大学の研究でやってもらえばいいくらいのもので、通常の検査の場にとってはものすごい負担になってくるうえ、偽陰性もむちゃくちゃ含んだデータの意味ってなんなのか、ということになる。

「うつさないためのマスク」が効果を上げている

――なぜ、欧米に比べて日本の死者数は少ないのでしょうか。

私はマスクが効いていると思いますね。感染が始まった初期段階で、日本人の多くがマスクをしていたが、欧米では人々は状況がひどくなるまでマスクを着けなかった。

重要なのはマスクと換気。一般の人が着けているマスクは防御には不十分だが、ウイルスを人にうつさないという意味ではすごく効果がある。極端な話みんながマスクをしている状況なら怖いことは何にもない。

院内感染で手洗いが不十分だと批判する人がいるが、私はあれは間違っていると思う。みんな手袋もしているし手洗いだってしている。院内感染の原因は換気が不十分か防御のマスクが機能していないか。防御のためのマスクの着け方は非常に大事。問題はエアボーン(空気感染)を認めていないこと。長距離の空気感染はないけれど2~3メートルの空気感染はある。

空気感染というとみんなが怖がると思って、「大きな落下するような飛沫での感染」ばかり言うけれど、科学用語では口から呼気とともに出る粒子や飛沫の形で出るものはすべてエアロゾルと呼ばれ、これを出させないことが重要だ。そこで「うつさないためのマスク」。

一般の人たちに対してドアノブに触るなとかいうけれど、ドアノブで感染している証拠なんかない。手洗いが一般論として大事なのは間違いないが、細菌とコロナウイルスとは違うのに、コロナウイルスを細菌のように語る間違った情報が拡散して変な方向で「怖れすぎ」が跋扈している。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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