国民に愛想をつかされた「アホノミクス」の末路 非常時にこそ露呈する「政策責任者の器」

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だが、すでに隠れ財政ファイナンスを全面展開しているチームアホノミクスが「今こそ財政と金融の一体運営のとき」などと言い出しても、われわれはしらけるばかりだ。下手をすれば、今の事態をダシにして財政ファイナンスの恒久制度化に乗り出すのではないか。そのように勘繰りたくなってしまうだろう。

さしものチームアホノミクスも、自分たちが日頃から事実上やってしまっていることを、「緊急時だからこそやる」とはさすがに言いがたいだろう。気が引けるからではない。彼らにそういう羞恥心はない。緊急時だからやると言ってしまうと、緊急時ではなくなったときに財政ファイナンスを引っ込めなければいけなくなるからである。

今のコロナ禍の場合のように、誰の目にも外付け装置の緊急出動が必要に見えるとき、日頃そのために備えを整え、蓄えを準備している政府であれば、待ってましたとばかりに勇躍して出動すればいい。

思うようには蓄えを準備できていない状況でも、通常はきちんと節度ある財政運営をしている政府であれば、堂々と「危急の今だからこそ、禁じ手を使います。そして、禁じ手は可及的速やかに再封印いたします」と宣言して、思い切って助っ人に乗り出せばいい。

平時に政策を私物化してきた代償

ところが、チームアホノミクスには上記のいずれも当てはまらない。「待ってました」とばかりに緊急出動できるような手堅い財政基盤からは、程遠い状態を放置してきた。放置というよりは、自分たちで作りだしてきた。

そのために、「異次元緩和」の金融政策を隠れみのにして、日銀が事実上の財政ファイナンスを行ってきたわけである。平時がこのようなありさまでは、有事に機動的に動けるわけがない。

結局のところ、チームアホノミクスは財政が何のためにあるのかがまったくわかっていなかった。有事に緊急出動するための外付けレスキュー隊だという認識がまったく欠けていた。そのような認識を持とうとする姿勢が欠如していた。

財政は、自分たちの野望や下心をそれこそ「ファイナンス」するためにある。そんなふうに考えているらしい。これでは、何をいつやるべきで、何をいつやってはいけないのかということの区別はつかない。もとより、これでは、いざというときに世のため人のために効果的に動けるはずがない。

「今は財政赤字のことを考えているときではない」というのは、通常は財政赤字のことを考えている人々、財政節度を心がけている人々だからこそ、言えることである。日頃からこうした姿勢に欠けている者たちには、かえって、ここぞというときに思い切った行動が取れないのである。

こうしたメリハリを利かせられるためには、政策の役割と機能に関する深くてしっかりした理解が必要だ。現政権には、それが完全に欠落していると言わざるをえない。

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