新しい生活様式が生む「売れる」「売れない」の差

売れる「こだわり食材」、売れない「口紅」

現に、「アイシャドウ」「アイライン」「マスカラ」といった、マスクで隠れない部分の化粧品については、他の化粧品と比較しても売り上げの減退速度が緩やかである。

これとは対照的に、「ほほべに」「ファンデーション」「化粧下地」といった顔面に広く使用する化粧品の売り上げ減速がやや強めに表れている。アイシャドウなどと比較して20〜30ポイント程度、売り上げの減速が強く出ているが、これは使用する化粧品の面積によるところもあると考えられる。

つまり、マスクで隠れている部分はファンデーションや化粧下地の使用を控えるといった行動により、これらの化粧品を買い替えるまでの期間が長期化した結果、売り上げの減速が強めに出たのではないか、というわけだ。

高まる「自炊」へのこだわり

もう1点、注目したい「新しい生活様式」は「食へのこだわり」である。推計販売金額ランキング「ベスト30」の2位・3位には、それぞれ「エッセンス類」(前年比+251.9%)、「プレミックス」(前年比+245.5%)が食い込んだ。

「エッセンス類」はバニラエッセンスをはじめとした香り付けの食品であり、「プレミックス」はホットケーキミックスに代表される調整粉のことをいう。ほかにも「ホイップクリーム」や「シロップ類」「バター」といったお菓子作りの材料の売り上げ増が目立つ。外出を自粛して自宅で過ごすうえで、子どもとも楽しく触れ合えるお菓子作りが巣ごもり期間の娯楽として人々に選択されていると考えられる。

お菓子作りの材料のほかにも、「シチュー」や「冷凍水産」といった、ひと手間かかる食材が一段と販売金額を伸ばしている。外出による娯楽が失われる中で、「食へのこだわり」が喚起される様子がうかがえる。

緊急事態が宣言された当初こそ、スパゲティや即席めんといった「保存がきいて比較的手間のかからない食品」が品薄になる場面もみられた。だが、ふたを開けてみれば、食に手間をかける人々の増加が顕著だということが判明した。

確かに、普段から売れているスパゲティ類と、比較的需要が限定的であったお菓子作りの材料を、伸び率のみで単純比較することはできないかもしれない。しかし、「新たな行動様式」という意味においては、自宅での食にこだわる人がコロナ禍をきっかけに増加したのは事実だろう。

これらの事例からわかるのは、「新しい生活様式」を否が応でも取り入れざるをえなくなる中、消費者の間で「こだわる対象」に変化が起きているということだ。

化粧品であれば、他人の目に触れる機会の少ないマスクの下の化粧は控えめになり、逆に目元に関しては需要が比較的維持されるというように、消費対象にメリハリが生じるようになった。

また、食へのこだわりに関して言えば、これまで外食に向かっていたお金を投じる先が、自炊をより一層豊かにするものへと変化している。「角煮」がTwitterトレンドに入ったことも、こうした変化を象徴する事例だろう。

「新しい生活様式」の先に、消費者がどのようなニーズを持つことになるのか。それにどれだけ早く気付けるかが、アフターコロナの消費財市場での浮沈を左右しそうだ。

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