ポカリスエット「中高生自撮りCM」制作の舞台裏 リモートワークで激変する広告制作の現場

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制作過程におけるやりとりも大半がリモートとなった。CMのクリエイティブディレクターを務めた、電通出身でなかよしデザインの正親篤氏は、「通常時は10人ほどでやる打ち合わせもリモートだった。監督やプロデューサーと自分は対面のやり取りが続いたが、途中から自分も対面の打ち合わせには行かなくなった」と振り返る。

広告主が立ち会う試写についても、「今回は初めてオンラインで試写を行った。スタジオであればその場で意見を言って編集に反映させたりできる。最初は戸惑いもあったが、なんとか進行できた」(大塚製薬の上野氏)。

広告制作、リモート化へ試行錯誤

通常の撮影から自撮りの手法に迅速に切り替えられたのは、「これまでのノウハウの蓄積があったことが大きい」(電通の眞鍋亮平デジタルクリエイティブ・ディレクター)という。ポカリスエットの場合、春にお手本となるテレビCMを流し、その後一般の中高生にダンス動画を投稿してもらい、その中から選抜された動画などを組み合わせて夏にCMにする取り組みを続けてきた。

今回の合唱でも、動画投稿サイト「TikTok(ティックトック)」で歌唱動画を投稿してもらい、選抜された約100人で6月にミュージックビデオをリモートで撮影する計画だ。オーディションもすべてリモートだ。「今の中高生の中にはテレビを見ていない人もいる。練習して時間を掛けて撮影することで、ポカリスエットにかかわる体験が深くなる」(眞鍋氏)。

大塚製薬の上野氏は、「ともするとコロナに乗じた企画ととらえられてしまうかもしれないが、4年間続けてきたことをそのまま体現している。撮影手法が変わっただけだ」と話す。ある程度ブランドイメージが浸透してきたからこそ、ネット上でも受け入れられたのかもしれない。

ソニー・ミュージックエンタテインメントがリモートで制作したテレビCM。YouTubeタレントの「フワちゃん」が出演した

テレビ局と同じく、大勢のスタッフや出演者が集まるCM撮影現場は緊急事態宣言の影響を受けている。YouTubeタレントの「フワちゃん」を起用したソニー・ミュージックエンタテインメントのコンピレーションアルバムや、タレントのつのだ☆ひろ氏を起用した森永乳業のアイス「ピノ」など、リモートで撮影したCMは徐々に登場しているが、すべての作業がリモートで可能なわけでもない。

電通の広告クリエイティブ部門で管理業務の責任者を務める石田茂富・CR計画推進センター長は、「広告の企画部分ではかなりリモート化が進んだ一方で、CM撮影や編集作業は9割以上が延期になった。撮影は現場で試行錯誤をしながら、よさそうなやり方を模索している段階だ」と話す。

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