志村けんが「最高傑作」で挑戦した2つの掟破り 「だいじょうぶだぁ」が今見ても飽きない訳

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志村けんさんの代表作『だいじょうぶだぁ』の魅力とは?(getty/Sports Nippon)

4月18日より、株式会社イザワオフィスのYouTubeチャンネルで『志村けんのだいじょうぶだぁ』の動画が公開されている。株式会社イザワオフィスは先日亡くなった志村けんさんの所属事務所である。

『志村けんのだいじょうぶだぁ』は1987〜1996年にフジテレビで放送されていた番組である。彼の代表作として知られているのだが、その過去動画がテレビで公開される機会はほとんどなかった。

イザワオフィスが動画公開を決断したのは、志村さんが新型コロナウイルス感染症で亡くなり、今もそのウイルスが世界中で猛威を振るっている状況を踏まえてのことだった。動画には広告が掲載され、そこで得られた収益から必要経費を差し引いた全額が日本赤十字社に寄付され、医療従事者への支援に役立てられるという。動画を見ている側は、志村さんのコントで笑いながら間接的に医療従事者を支援することができる仕組みだ。

『だいじょうぶだぁ』の衝撃

物心ついた頃からザ・ドリフターズの『8時だョ!全員集合』(TBS系)を見て育ってきた私にとって、その終了後に始まった『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』(TBS系)と『志村けんのだいじょうぶだぁ』は、個人的に最も思い入れのある番組である。

とくに『だいじょうぶだぁ』が始まったときには興奮した。ドリフの中でも最も面白いと思っていた加藤茶さんと志村さんが独立する形で始まった『加トケン』は格別に面白かった。その後、さらに志村さんが単独で番組を始めるというのだ。もちろん面白いだろうと思って、最初から期待が高まっていた。実際に見てみると、すぐにその虜になった。

当時の映像を改めて見てみても、血気盛んな若き日の志村さんが独立して冠番組を持ち、好きなことをやって乗りに乗っている感じが伝わってくる。『全員集合』や『加トケン』と比べても、コントの設定や内容に古さを感じさせるところが少なく、今の時代に楽しむにも最適だ。

志村さんはこの番組を始めるにあたって、今までとはコントの雰囲気を大きく変えようと考えていた。そこで彼がやった大きな変革は2つあった。1つは、芸人以外のレギュラーメンバーを迎えること。もう1つは、1時間番組の中で短いコントをたくさん見せることだった。

志村さんがこの番組のレギュラーに起用したのは、田代まさし、桑野信義、いしのようこ、松本典子といった顔ぶれだった。田代と桑野はミュージシャンで、いしのと松本はアイドルだった。志村さんは彼らの笑いに対する適性を見抜き、レギュラーに抜擢したのだ。中でも、田代の存在感は突出していた。志村さんの右腕として多くのコントに出演し、主にツッコミ役として安定した演技を見せていた。

そして、『全員集合』や『加トケン』ではワンシチュエーションの長めのコントが中心だったのに対して、『だいじょうぶだぁ』では短いコントを次々に繰り出していくことにした。この方法だともちろん撮影には手間がかかる。しかし、テンポよく短いコントを連発することで、視聴者を飽きさせずに勢いを持続させることができた。

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