町内会がコロナ禍でこそ役割を発揮できる理屈 物理的距離を取らせつつ、つながりも作れる

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戦後、アメリカの占領政府は町内会を全体主義の道具とのみ見なし、廃止しようとしたが、多くは形を変えたり占領終了後に再編されたりして存続した。実質、1958年には町内会は98%の地域に存在していた。戦時中に近所の人たちに戦時債券を売りつけていた同じ主婦たちが、数年後に今度は赤十字社の寄付を募り、国家復興債券を売るのに奔走していた。

現在、町内会への参加は純自発的であるが、国との連携はある程度続いている。全国では約30万の町内会、自治会が活動を続けているとみられ、同じ目的達成のため役所と緊密に連携していることが多い。

町内会は社会学でいうロールシャッハテストのようなものだ。ある人たちにとっては人が孤立しがちな現代において地域の結びつきを保つ、日本社会をまとめる糊(のり)のようなものだ。また、ある人たちにとっては、他人のことに過度に首を突っ込むうるさいおせっかい集団であるし、多くの自由主義を重視する人は町内会を社会的保守な団体だと見るし、極めた場合に左翼運動家や在日朝鮮人が町内会の活動に差別される経験を持っている。そして現実にはその両者である。

町内会が本領を発揮するのは災害時、つまり台風や地震の際の食料の調達、被災者の避難所手配などにおいてである。現在、新型コロナウイルスが日々感染拡大していく中で、町内会はその感染防止に非常に大きな役割を果たせるかもしれない。

町内会が機能を発揮するには若い世代が必要

近所を巡回し、地元住民に、公共の場での人との距離を保つことやマスクをすることを呼びかけたり、具合の悪い人に自主隔離を勧めたり、酒飲みがバー、居酒屋、公園などでたむろするのをやめるよう注意することもできるだろう。

ただそのためには、町内会は新たに若い会員を集める必要がある。若者の町内会への参加率は近年著しく低下していて、今では高齢者がメインだ。高齢者はウイルスに最も脆弱な年代である一方で、若者は比較的免疫性が強い身体を持っている。若いメンバーはテクノロジーを導入し、メッセージングアプリやビデオ会議ツールを介して通常の対面式の会議をオンラインにすることができる。

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