サントリー「絶好調のチューハイ」休売する事情 数量不足が深刻な消毒用アルコールへ転用

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同社にはジレンマもある。チューハイは現在、家飲み需要が高まり、販売数が大きく伸びている。サントリーHDの3月のチューハイ類販売数量は前年同月比で29%も増えた。「チューハイが好調な中での休売となる」(同社)ため、消毒用アルコールへの転用はまさに身を削る行為となる。

厚労省は3月の規制緩和に加えて4月にも、アルコール濃度が60%のアルコールであれば、飲用であっても消毒用に使えるようにする規制緩和を行った。こうした動きを受け、地方の酒メーカーも消毒用アルコール生産に向けて動き出している。

「常陸野ネストビール」などのクラフトビールで有名な茨城県の木内酒造は、4月下旬からアルコール度数70%のウイスキーを自社ホームページなどを通じて販売している。「一般消費者や地域のクリニック、歯医者などからの要望がとても多く、注文数も多い」(同社)と手応えを感じている。

ビールを使った消毒用アルコール製造も

同社はさらに、茨城県内に工場を持つアサヒビールとキリンビールと組み、飲食店の営業自粛で売れ行きが落ちているビールを使って製造した高濃度アルコールを、県内の医療機関に無償提供すると発表した。

両社からビールを12キロリットルずつ受け入れ、アルコール濃度70%まで蒸留。消毒用アルコールとして5月下旬から提供を開始する予定だ。

規制緩和が進んでいるが、酒類メーカーによる消毒用アルコール分野への参入により、品薄は解消されるのだろうか。厚労省は「これまでにない量を消費者が求めており、どれだけあれば解消できるかが明言できない状況」という。

消費の現場でも、「新型コロナ以前のニーズが低かったので、いきなり増産は難しいだろう。入荷量もわずかで、店頭に出しても一瞬で売り切れる」(ドラッグストア大手のスギ薬局)状況が続いている。消毒用アルコールの不足解消にはまだまだ時間がかかりそうだ。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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