新型コロナで注目「空中タッチパネル」の実力度 非接触型で高いニーズ、三菱電機など参入

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空中タッチ操作パネルには、大手電機メーカーも本格参入を目指している。三菱電機は空中に画像を表示する技術開発を2015年から進めている。

三菱電機は当時、3D映画「アバター」のヒットで注目されて普及した3Dテレビの販売拡大に陰りが出てきため、これまでとはまったく異なる新しいディスプレイ製品を生み出す検討に取り掛かった。同社の先端技術総合研究所を中心に、家庭用大型テレビほどの大きさの空中映像を表示する「大型空中表示サイネージ」を想定し、空中映像技術の開発を始めた。

だが、開発を進める中で、工場内では手が汚れていたり、安全のために手袋をしている場面が多く、手を洗ったり、手袋を取らずにそのまま操作できるタッチパネルの需要が多いことが判明。同研究所はもともと、手の動きだけでカーオーディオなどを操作できる技術を保有しており、こうした技術と組み合わせることで新たな空中タッチ操作パネルの試作を繰り返してきた。

CEATECで最終製品イメージを展示

空中タッチ操作パネルは指紋が残らず、横からのぞいても映像が見えないため、高いセキュリティが求められる銀行ATMやマンションのエントランスのドアホン、衛生管理の厳しい医療機関や食品工場などにも応用可能だ。

2019年10月に千葉県・幕張で開かれたハイテク製品の展示会「CEATEC」で三菱電機は、道案内表示をする大型デジタル広告やタッチ操作のできるタイプなど、最終製品のイメージを発表。同社の空中映像技術は、安全ベストや自転車などに使われる反射板のような「再帰性反射シート」を利用しており、これまで解像度と明るさの向上を進めてきた。今後は画像の解像度の向上や小型化を進め、2021年度中の製品化を目指す。

三菱電機・先端技術総合研究所の開発を担当している菊田勇人氏は「開発を始めた当時よりもスマホなどが普及し、直接画面に触りたくないという声が出てきて、空中映像の技術が生かせる場が増えてきた。(新型コロナウイルスの感染が拡大している)今はそのような声がさらに増えている。今後は他のメーカーも参入してくるだろうが、10年後には空中に映像が表示されて空中で操作するのが当たり前になっている」と予想している。

田中 理瑛 東洋経済 記者

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たなか りえ / Rie Tanaka

北海道生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。報道部、『会社四季報』編集部を経て、現在は会社四季報オンライン編集部。食品業界を担当。以前の担当は工作機械・産業用ロボット、ドローン、医療機器など。趣味は東洋武術。

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