コロナの影響を見誤りかねない商業動態統計

政府統計の「過去は不変」という縛りは問題だ

ここから先1年分の商業動態統計は単純に過去との比較はできない(写真:共同通信)

3月の小売業販売額は、前年同月比4.6%減の12兆8440億円――。経済産業省が4月30日に公表した商業動態統計速報は、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛の影響が表われたものとして受け止められた。

4月には緊急事態宣言が発出され、経済のダメージを見るうえで、消費を二分するサービス業と小売業の動向は注目される。

ところが、そのうちの小売を見るうえで重要な商業動態統計については、この3月分から1年間は注意が必要なのだ。というのも、2020年2月と2020年3月の間には、統計の扱い上、大きな隔たりがあるからだ。同統計のウェブサイトでは、3月速報に「水準の調整」と注記されている。

いったい何が行われたのか。

家電販売の減り方に大きな違い

端的な例として、小売業のうち家電などを指す機械器具小売業の数字を見てみよう。

2020年3月の販売額は8620億円。前月は4610億円であり、2倍近い値だ。3月は新生活を前に家電販売が伸びる時期ではあるが、2019年3月の数字である5950億円と比べても1.4倍になっている。リモートワーク用の器材が売れたとして、それほど伸びるだろうか。

実は、2020年2月までの数字と、2020年3月以降の数字とは算出方法が違う。2020年2月までは2007年3月を起点に推計を延ばしている。一方、2020年3月以降の数字は2015年12月を起点に推計を延ばしたものだ。単純に比べることはできない。

公表されている機械器具小売業の前年同月比は増加ではなく6.7%の減少である。2020年3月の販売額を2019年3月の販売額で割った伸び率を、さらにリンク係数(1.5525)で割って算出したものだ。2020年3月の販売額を旧起点と新起点それぞれで算出した数字の比率であるリンク係数を用いることで、起点の違いによって生じたギャップを取り除いた結果だ。

しかし、伸び率を算出する際には、同じ基準の数字を比べるのが基本のはず。2015年12月を起点に推計した2020年2月までの業種別販売額は参考系列として公表されている。参考系列で算出した前年同月比は、10.0%減とさらに大きな減少となっている。

ほかの業種ではどうだろうか。

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