無自覚に「部下のやる気を殺ぐ」リーダー6選 経営学者がみた「創造力をつぶす」NG行動

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【4】不安感を覚えるような環境を改善しない人

経営者は組織の再編が大好きだ。昔ながらの階級制度を持った組織もあれば、最近では上下関係をなくした水平的な組織形態も生まれている。

しかし私は、創造力を働かせるうえで大事なことは、組織そのものより心理的安全性なのだと強調したい。心理的安全性とはチームメンバーの間であればアイデア、意見、疑問、ミスなど何でも安心して話し合えるという状態をいう。

そうした観点から、会議の仕方やメンバーの仕事の範囲などの細目を決めている会社もある。必要なのは、部署の名称を変える組織改革ではなく、そうした環境作りのための改革だ。

アイデアをつぶさない反論の仕方とは

【5】反論さえすれば議論が活性化すると思っている人

あえて反論するというテクニックを取り入れているリーダーは多い。アイデアや創造力を押しつぶさない反論とは、どのようなものだろうか。

ここで私は、3つの大事なポイントとして、反論役の人選、反論のタイミング、態度を挙げたい。1人よりも2人に反論させる、問題解決の初期段階で反論しない、新たな選択肢が生まれるような働きかけをする、などだ。読者の上司が仕組んだ「あえての反論」がそうしたものになっているとよいのだが。

【6】集中することが最上だと思い込んでいる人

創造的な仕事を加速させたいときは、それだけに集中できる時間と、邪魔が入らないスペースを与えればいいと信じている人は多い。

集中することのメリットもあるので、この問題はちょっと難しい。しかし私は、アイデアを生み出したいなら、時には問題から遠ざかるという、心理的な距離を取ることのメリットを述べておきたい。

具体的には自分以外の誰かになりきって、その人ならどう考えるか、というふうに「社会的距離」を取ること。旅行などで「物理的、文化的距離」を取ること。もし未来だったらどのような解決策があるかを考えるというふうに「時間的距離」を取ることなどだ。

イタリアの医師であり、教育者でもあったマリア・モンテッソーリは「人生に刺激を与えつつ、その成長と広がりの邪魔をしない。これが教師のいちばんの仕事である」と述べた。

リーダーの仕事もそうだ。会社やチームのメンバーが持っている創造力を解き放つことは、最重要なミッションのひとつである。

マイケル・A・ロベルト ブライアント大学経営学教授

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ハーバード・ビジネス・スクール教授、ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスの客員教授を歴任。著書に『なぜ危機に気づけなかったのか』『決断の本質』(ともに英治出版)。意思決定、リーダーシップ、ビジネス戦略をテーマにしたオーディオ/ビデオ講義シリーズもある。

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