銀行システム開放迫る「オープンAPI」とは何か システムへの接続めぐり、中小地銀に不満

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電代業者には口座情報取得サービス業(AISP)と、決済指図伝達サービス業(PISP)の2種類があり、口座情報を参照するだけならAISPで足りるが、自動経費精算サービスなど、お金の出し入れまで手掛けるならPISP登録も必要になる。

改正銀行法ではAISP業者や銀行に対応期限も設け、従来からサービスを提供している業者には2020年5月末までに銀行と契約するよう求め、銀行側にも5月末までにAPIを開放する契約を結ぶよう求めた(その後コロナ禍で9月末に延長)。結局、API開放に対応しないとしたのは、みずほ信託銀行や新生信託銀行など数行にとどまり、それ以外の国内130銀行はすべて2019年3月末までに対応すると表明した。

だが、契約や実際の接続といった実務の交渉は一時難航したようだ。最大の原因は、銀行ネットワークへの接続時に電代業者が銀行に支払う手数料にある。

中小の地方銀行に渦巻く不満

銀行からすれば、全国民が24時間いつでも現金をおろせる、世界でも類を見ないネットワークを構築できたのは、銀行が長年にわたって莫大なシステム投資を実施してきたからこそという思いがある。API接続への対応に伴う設備投資も発生している。

その結果、銀行側が投資回収の視点で算出した接続料と、電代業者が負担できる水準には乖離が生じる。一方、電代業者からすれば、これまで無料だった接続料が有料になり、顧客から徴収する料金にどこまで転嫁できるか、なかなか難しい。

口座数の多い大手行の場合、多数の預金者の利便性を損なうAPIの開放拒絶は選択肢としてありえず、接続料で投資を回収できなくても、大手電代業者と連携することで得られる有形・無形の恩恵も相応にある。しかし、中小規模の銀行には新たな投資に見合うだけの恩恵はなく、莫大なコストをかけて構築してきたシステムを電代業者にただ乗りされるとの不満が渦巻いていた。

そんな状況を踏まえて動き出したのが公取委である。2019年10月から銀行や電代業者、システムベンダーへのヒアリングを開始。「顧客データは誰のものと考えるか」「自分自身の口座情報を参照するのに料金が発生することについてどう考えるか」などと尋ねるアンケートも行った。

金融庁も、電代業者と契約締結の意思があるかどうか、2020年1月末までに経営判断せよと銀行側に迫った。すると効果はてきめん。2019年末時点で電代業者と契約を済ませたのは130行中79行に達し、契約締結の交渉もしていない銀行はわずか5行にとどまった。

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