「休校のアナウンスをきっかけにパニックが起こり、買い占めが発生するなど雰囲気が一変しました。4月3日に州の外出禁止令が出て、知事が『自分はすでに感染していると思って、他の人を守るためにも家にいてください』と呼びかけ、人々もそういう意識で行動するようになりました」。
大井さんが暮らす街では、休校初日から小中高等学校の授業がオンライン化された。ネット環境のない家庭にはプリント配布などで対応している。
「オンライン授業は質よりスピード重視。Googleクラスルームなど既存のサービスを使い、『やれることからやっていこう』という感じです」
給付金は申請不要で自動振り込み
トランプ大統領は3月13日、最大500億ドル(約5兆4000億円)を検査や治療の拡充に充てると発表。国民皆保険ではないアメリカで、無保険でも無料でコロナウイルスの検査や治療が受けられるようにした。
さらに3月27日には2兆ドル(約220兆円)規模の景気対策法が成立。年収7万5000ドル(約825万円)以下の大人1人に1200ドル(約13万円)、子ども1人につき500ドル(約5万3000円)を給付することが発表された。またフリーランスや、ウーバーなどネットで単発の仕事を請け負うギグエコノミー労働者も失業保険の対象とした。
大井さん家族にも、1人1200ドルの給付金が4月14日に振り込まれたという。昨年の確定申告をもとに対象者へ振り込まれるため、申請は必要ない。夫婦が別々に確定申告している場合は、給付金も各口座に振り込まれる。自分が対象かどうかは国税庁のサイトで確認でき、口座を持っていない人には小切手が郵送される。
「決定から3週間足らずで振り込まれたので、友だちとも早いねって話をしてたんです。外国人の私も同じように補償がもらえたことで、政府にいち市民として認められているんだと安心しました。まあ、今の政府には『納税者である』ことが最重要なのかもしれませんが……」。
これまでトランプ政権は、移民に対し厳しい政策を取ってきた。「検査で不法移民と分かれば強制送還されるのでは」「感染が判明したら永住権が取れないかも」といった恐れから、移民が検査を受けずに感染拡大したり死亡したりするケースも出ている。また黒人の死亡率が高くなっていることから、社会の構造的な問題が命の選別につながっているとの指摘もある。
4月に入り、経済回復を求め飲食店やジムなどの営業を再開する州も出てきた。しかし「まだまだ油断できない」と大井さんは考える。「アメリカには、祖父母やその上の代にスペイン風邪を経験した人がけっこういます。スペイン風邪は地球を3周したと言われ、第2波の時に最も多くの人が亡くなりました。そういう話を聞いていることもあり、規制を続けるべきと考えている人が私の周りには多いです」。
大井さんらが暮らすアラバマ州も慎重な姿勢を崩さず、すでに8月までの休校が決まっている。
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