北米発「アマゾンキラー」がいま楽天と組む真意 コロナで浮き彫り、「アマゾン依存」のリスク

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――「コロナ後」のビジネスのあり方はどのように変わりますか。

それはまだ誰にもわからない。ただ、1つ間違いないのは、企業のECに対する考え方が変わる、ということだ。小売り事業を営む企業にとって、ECはなくてはならない存在になる。

日本やアメリカの小売店には、これまでオンラインでの販売を重視してこなかったところも多い。これからは、オンラインファーストになるか、オンラインで追加の売り上げを得られるようにするか、いずれかの戦略を採らざるをえないだろう。

こうしたオンラインシフトを小売店が実現するには、マーケットプレイスやプラットフォームの存在が不可欠だ。ショッピファイでも従来のようなECだけでなく、リアル店舗における購買体験に近いものをオンライン上でユーザーに提供することを目指している。商品を3Dモデルやビデオを使って紹介する機能などがその一例だ。

「アマゾン一強」は続かない?

――バンク・オブ・アメリカの試算によると、アメリカのEC市場におけるアマゾンのシェアは約44%にのぼり、小売大手のウォルマート(約7%)やEC大手のイーベイ(約5%)などの競合を大きく引き離しています。2020年1月から3月までのEC関係の売上高は511.3億ドル(前年同期比25.8%増)とアマゾンの勢いは止まりません。コロナ後も「アマゾン一強」なのでしょうか?

アメリカではアマゾンが実質上唯一のマーケットプレイスで、確かに市場の半分以上を占めていると思われる。だが足元では、新型コロナの影響で(注文が殺到し)、ユーザーがアマゾンで商品を買うことが難しくなっている。一時期は注文した商品が到着するまでに2~4週間もかかるような状態だった。

また、多数の中小EC事業者の在庫管理等を支援しているわれわれとは違って、アマゾンのフルフィルメント(在庫管理・物流)サービスは今や大手事業者しか使うことができなくなった。

アメリカにおいてアマゾンはいわば「単一障害点(ある1点が機能不全に陥るとシステム全体が機能しなくなること)」となっており、一大プラットフォーマーに頼りきりになることの社会的リスクが、新型コロナで明らかになったといえる。

ショッピファイは以前から、小売り事業におけるマルチチャネル化の必要性を訴えてきた。今まさに、われわれの言ってきたことが正しかった、と証明されたといえる。これからは、販売チャネルをいかに多様化していくのか、収益源を分散していくのかが小売事業者にとっての生命線となるはずだ。

佃 陸生 東洋経済 記者

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つくだ りくお / Rikuo Tsukuda

不動産業界担当。オフィスビル、マンションなどの住宅、商業施設、物流施設などを取材。REIT、再開発、CRE、データセンターにも関心。慶応義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)修了。2019年東洋経済新報社入社。過去に物流業界などを担当。

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長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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