北米発「アマゾンキラー」がいま楽天と組む真意 コロナで浮き彫り、「アマゾン依存」のリスク
――世界最大のECプラットフォーマーはアマゾンであり、日本における存在感も大きいです。アマゾンと組んだ方がメリットを出せるように思えますが、なぜ楽天なのですか。
ショッピファイを利用するEC事業者は総じて、自分たちのブランドイメージを重視している。アマゾンの場合、どんな商品も同じ形式、同じデザインで表示されるが、楽天市場は違う。出店者ごとにサイトデザインが異なっており、アピールしたい内容に合わせてカスタマイズできる。
出店するEC事業者が1億人規模の消費者にリーチしつつ、かつ自分たちのブランドを維持できるのは楽天市場だと考えた。
企業理念や経営哲学も楽天と一致している。ショッピファイは、小さな事業者がブランドをつくる力を信じるという経営哲学を持ち、楽天は出店者とともに成長していくことをミッションに掲げる。どちらもEC事業者を支援する点で共通している。
当面は楽天との連携に注力
――今後もアマゾンとの提携に踏み切る可能性はない?
ショッピファイはEC事業者がマルチに販売チャネルを持つことの重要性を理解しているので、他のマーケットプレイスを排除するつもりはない。EC事業者にスケールメリットを提供できるならば、どんなパートナーとも組む。
ただ、当面は楽天との連携強化に注力したい。楽天市場とのシステム連携には合意までに2年ほどかかっており、システム構築にはさらに7カ月ほどかかっている。連携にはそれだけ複雑で重厚なシステム改修が必要であり、販売チャネルを増やすことは非常に大きな投資も伴う。マーケットプレイスとのシステム連携については、数を追うことでサービスの質を落とすようなことはしたくない。
――昨今は自社で企画・製造した商品をSNS等で宣伝し、自社ECサイトで販売する「D2Cブランド」が存在感を増しています。そうした事業者の中には、楽天などのマーケットプレイス色がつくことを嫌がるケースもあります。
確かにショッピファイでも、マーケットプレイスを嫌う事業者が存在する。一方で、マーケットプレイスと自社ECサイトを並行して運用している事業者もたくさんいるし、リソースが限られる中で自社ECサイトを優先してマーケットプレイスの運用を半ばあきらめている事業者もいる。事業者にもいろいろなパターンがあるということだ。
楽天との連携により、自社ECサイトだけでなく楽天市場のサイトも、ショッピファイのシステムを通じて一元管理できるようになった。マーケットプレイスでの販売も容易になったことで、EC事業者に大きなメリットを提供できるようになるはずだ。
また、マーケットプレイスに出店することでブランドに対する認知度が増し、消費者からの信頼を得やすいというメリットがある。マーケットプレイスを嫌っていた事業者も、そうしたメリットを享受することで考えを変えるかもしれない。