しかし当初の思惑から外れて「みんなで集まって同じ場所で仕事をする」というのは、今のコロナ禍では「もっともやってはいけないこと」になりました。欧州では、コロナウイルスが登場する前から、家から仕事をする人は珍しくありませんでした。
テレワークをする人は「時々する人」も含めると、アイスランドでは33%以上でしたし、スウェーデンでは約30%、イギリスでは24%(European Union Open Data Portal, 2014)でした。
コロナの前からテレワークが導入されていたこれらの国々では現場至上主義ではなく、もともとが「出勤至上主義」ではありませんでした。ドイツに関しては、退勤管理が厳しく、意外にも出勤を重視する企業が多かったです。しかしコロナウイルスが登場してからの切り替えは早く、現在はテレワークが主流となっています。
「在宅ワーカー」に注がれる偏見と妬み
私が日本の会社で働いていたときに、こんなトラブルがありました。日本で働く日本人スタッフが、同じ系列の会社でフランスの避暑地に住む日本人スタッフが現地でテレワークをしていることにケチをつけ、何かとネガティブな情報を周囲に言いふらしていました。
日本国内のスタッフを仕切っていたその男性は口癖のように「われわれは毎日満員電車に乗って通勤しているわけですからね」と言っていました。どうも彼が言いたかったことは、「われわれは毎日電車に乗って大変な思いをして通勤をしており、仕事を最優先に考え真面目に仕事している」ということのようでした。
確かに在宅勤務であるスタッフのフランスの家に電話をすると、子供が出ることがありました。これは欧米的な感覚だと、それほど目くじらを立てるようなことではありません。ところが、日本側のスタッフは「職場なのに子供が電話に出るなんて、仕事をナメている。ありえない。だからそもそも在宅勤務は……」という反応でした。「在宅は楽している」という偏見と「在宅はズルイ」という妬みのようなものが混在していたように思います。
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