9年前に警告されていた「感染対策と鉄道運休」 2011年と2014年に国が調査報告を行っていた

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このうち、臨時列車をすべて削除すると次の図のようになる。

東海道新幹線の定期列車のダイヤ。今年の大型連休はこの本数だ。(筆者作成)

運行本数が激減し、隙間だらけになった。スッカスカである。臨時列車というと、行楽シーズンやイベントに合わせて、1日1往復、数往復という印象がある。しかし東海道新幹線の臨時列車はとても多い。時刻表に記された運転日を見ると、月曜日の朝、金曜日の夜など細かく設定されている。土曜日曜祝日だけではなく、曜日ごとの臨時列車があるようにも見える。おそらく、週初めの会議に間に合う列車、単身赴任者の週末帰宅、年金受給者の旅行などの事情を加味していると思われる。毎日運行する「定期列車」はとても少ない。

大阪メトロは減便で乗客数を減らした

JR在来線も観光列車や特急列車の一部を運休している。大手私鉄も有料特急や座席指定列車を運休する動きがある。地方鉄道では銚子電鉄が定期列車を運休、大井川鉄道は井川線を運休するほか、平日も休日ダイヤにするなど運行本数を削減する会社も出ている。

しかし、今のところ大都市の通勤電車は運休していない。目立つ動きは大阪メトロだ。外出自粛を促すため、4月11日(土)、12日(日)に7路線で2割程度を減便した。混雑率は時間帯によって10%〜30%程度となり、全員着席できる程度だったという。18日(土)〜19日(日)は対象を全9路線に拡大し、大型連休期間の土日祝日も減便を継続する。

この減便も比較してみよう。御堂筋線のダイヤを描いてみる。

御堂筋線の土休日ダイヤ。大阪メトロ公式サイトの時刻表を元に筆者作成
御堂筋線の土休日減便ダイヤ。大阪メトロ公式サイトの時刻表を元に筆者作成

減便の対象は主に新大阪―天王寺間の区間列車だ。そのため、御堂筋線と相互直通運転している北大阪急行線には影響はない。なるほど、運行間隔が空いている時間帯がある。

しかし、東海道新幹線ほどの思い切った減便ではない。むしろ、運休した列車に乗れなかった乗客を引き受けて後続列車が混雑しそうな気がする。これは減便と言うより間引き運転だ。理想としては、乗客の偏りを防ぐため、運行間隔が等しくなるようにダイヤを作りなおすべきだ。

大阪メトロは減便によって乗客数は10%減ったという。「大阪府の最新感染動向」によると、新規感染者数の日計最高記録は4月9日の92人だ。4月18日は88人、4月20日は84人となっている。累計感染者数の増加は少しゆるんだように見える。これを大阪メトロの減便に直結したと考えるには早計だろう。もっと思い切った減便を実施すれば、もっと効果があったかもしれない。

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