9年前に警告されていた「感染対策と鉄道運休」 2011年と2014年に国が調査報告を行っていた

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「鉄道の減便と乗客数減少が感染拡大抑止になる」という点は、2011年の調査研究とシミュレーションで報告されている。

国土交通省の政策研究機関「国土交通政策研究所」は、交通と感染について2つの調査結果を報告している。2011年9月の「通勤時の新型インフルエンザ対策に関する調査研究(首都圏)」と、2014年8月の「公共交通機関における新型インフルエンザ等対策に関する調査研究−公共交通機関における感染予防策に関する検討−」だ。どちらも国土交通政策研究所のサイトに公開されている。

「通勤時の新型インフルエンザ対策に関する調査研究(首都圏)」は「都市鉄道の混雑度の抑制により、強力な新型インフルエンザの感染を相当程度抑える対策の実現可能性と効果を検証することを目的」として行われた。感染拡大を可能な限り抑制し、健康被害を最小限にとどめると同時に、社会・経済を破綻に至らせない輸送を確保する。そのためには「列車の運行をどこまで削減し、乗客数を制限すれば良いか」という着地点を調査した。なお、この調査では電車内での感染は考慮していない。

対策をしないと5人に1人が感染

結論としては、まったく対策をしない場合は、最初に新型インフルエンザ感染者が発生してから24日目に首都圏の有病率は最高となり20.9%となる。5人のうち1人が感染する。しかし、7日後から乗車率20%にすれば、ピークは30日後まで先延ばしになり、有病率は0.8%まで下げられる。乗車率20%の対策を7日遅らせると、17日目にピークを迎え、有病率は5.4%に上昇する。

乗車率を変化させて、7日後から乗車率10%に半減すると、ピークは31日後までと乗車率20%と変わらない。しかし、有病率は0.33%まで下げられる。逆に乗車率を30%に増やした場合の有病率は1.67%だ。ピークは29日目となる。つまり、7日後に対策を実施した場合は、対策しない場合よりピークを1週間程度遅らせられるうえに、乗車率を低くするほど有病率は下がる。

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