9年前に警告されていた「感染対策と鉄道運休」 2011年と2014年に国が調査報告を行っていた

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対策は早めに、乗車率は低めにするほど、感染拡大抑止効果がある。報道によれば大阪メトロが減便した土休日の乗車率は10%〜30%だった。これは2011年の報告書の数字に近い。ただし、報告書のシミュレーションは「毎日連続して対策した場合」だ。実行力は認めるけれど、土日祝日だけでは不十分だった。

「公共交通機関における新型インフルエンザ等対策に関する調査研究」は、上記の調査結果を踏まえて「交通事業者が新型インフルエンザ発生時の対策を定めているか」を調査している。2013(平成25)年に施行した「新型インフルエンザ等対策特別措置法」では「指定公共機関及び指定地方公共機関は、新型インフルエンザ発生時において、新型インフルエンザ等対策を実施する責務を有する」とされた。調査は鉄道・バス事業者へのアンケートと仮想路線、仮想ダイヤによって、ピークシフトによる混雑時間の変動シミュレーションがある。

欠勤者が増えると運行を維持できない

鉄道事業者へのアンケートは25事業者から回答があった。感染拡大に対応したダイヤの変更時期については「従業員の欠勤率」が11社と最も多く、次いで「運行要員の確保状況」が4社だ。合わせて15社、6割が社内の事情をきっかけとしていた。「インフルエンザの発生と流行状況」は2社であった。また1社は検討したことがない。

鉄道事業者にとって感染拡大のリスクは3つある。1つは「社内の感染者が増える」だ。列車の運行を維持できなくなる。平日ダイヤを維持可能な乗務員の欠勤率は、1割未満が6社あった。1割程度は7社。つまり、欠勤者が1割を超えると半分の会社が平日ダイヤを維持できない。

2つめのリスクは「乗客減少による収入減」、3つめは「社会に感染を拡大させる」だ。アンケートでは収入減については触れていない。「感染拡大」については「減便するか否か」の判断材料としているかを問う。鉄道が感染を拡大させることは2011年の調査結果が出ている。それを判断材料とするか、という問いは、鉄道事業者が調査結果を意識しているか否か、という質問でもある。

調査結果によると、平日ダイヤから特別ダイヤへ移行する判断機関をいつ設置するかという問いに対して、感染をきっかけにする事業者が多かった。発生段階の変化をきっかけとする事業者は12社と半数になった。7社は「社内欠勤者の増大傾向」としている。また、仮に従業員の4割が欠勤した場合、混雑緩和のために増発できるかという問いに対して、ほとんどの事業者が困難と回答している。

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